計算ニガテな東大生が活用する「計算しない計算」の極意とは?『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第59回は、計算ミスを減らすための方法を説く。

計算ミスを避ける「2つの方法」

 東京大学現役合格のため、苦手科目である数学について、小学2年生の算数からやり直すことになった天野晃一郎と早瀬菜緒。数学が苦手な理由について、東大合格請負人の桜木建二は「計算力の弱さ」にあると分析する。

 私も、計算が苦手だ。過去のテストをひっくり返せば、1桁の計算でミスをしたものがたくさん見つかるだろう。だが計算ミスは癖のようなものだから、いくら気をつけてもやらかしてしまう。

 私は、2つの方法で計算ミスを回避するようにしていた。

 まずは、徹底的な見直しである。答案を舐めるように見つめ、1つ1つ検算していく。とはいえ、見直しの時間が取れない場合もあるだろう。

 だから、あらかじめ見直しがしやすいような答案を書いておくのが良い。答案と計算用紙を往復した時に頭が混乱しないよう、式に番号をつけて管理する、筆算の各桁を丁寧に揃えるなど、工夫はいくらでもできる。

 2点目は、「そもそも計算をしない」ことだ。計算をしない方法はいくつかある。例えば、中学受験では「円周率は3.14」とされる場合がほとんどだ。だから、多くの中学受験生は九九のように「3.14の段」なるものを作って暗記をする。

 ところが、中学校に入ってからは、この計算は全くと言っていいほど必要がなくなる。“π(パイ)”という記号が登場するからだ。このように、桁数が多くて何回も登場する数値を記号に置き換え、最後にまとめて計算するというやり方だ。数式において、複雑な項をまとめて“X”とおいたりするのもその一種と言える。

「計算ミスがなかったら…」に隠された盲点

漫画ドラゴン桜2 8巻P71『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 計算を後回しにする方法は他にもある。数学の答案の採点では、「答えが合っているか」の他に、「正しい方針で記述されているか」を評価する「方針点」がある。まぐれで正解しても不正解になり、仮に計算が間違っていたとしても回答の筋が良ければ高得点が見込める。

 だから、答案のはじめに回答方針を宣言すると、それだけで点が取れる場合がある。「まず○○に場合分けをし、××の値を求め〜」というように、回答方針を書く。

 これは余談だが、答案というものは自由度が高い。以前SNSで見たのだが、答案の半分くらいまできたところで「(直前まで記述してきた)○○というのはウソで〜」と軌道修正を図ったものがあった。間違いに気づいて消す時間がもったいなければ、×印で消すのもありだ。

「その方針が題意に過不足なく適している理由」が記されていれば、あとは個別の値を代入するだけだ。もし時間がなければ、計算する必要もない。多少点数は落ちるだろうが、半分くらいの点数はもらえるかもしれない。

 それでもやはり、計算ミスはする。どんなに気をつけても、限られた時間の中ではミスする部分がある。そこで重要なのは、「計算ミスがなかったらこれくらいの点数が取れていた」と軽く見ないことだ。もし自分が計算ミスをしていなかったら、周りの受験生も計算ミスをしていない。つまり、相対的な立ち位置は変わらない。

 たかが計算ミスと侮らずに、その原因をしっかり分析するのが肝要だ。計算用紙の使い方なのか、字が汚くて「2」と「3」を間違ったのか、あるいは、使いにくい消しゴムのせいで消す前の文字が残っていたのか――。答案を読み返すことで、次に改善できる点が見つかるはずだ。

漫画ドラゴン桜2 8巻P72『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 8巻P73『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク