却下されそうになるが
八木(妻夫木聡)の助け舟

健太郎(高橋文哉)にも協力してもらって紙芝居を描きあげ、島中隊長(横田栄司)に披露する。
だが、反応は芳しくなかった。内容がぼやけている。勧善懲悪がいいのではないかと言うのだ。このまま却下されたら、嵩は宣撫班を外されて、元の厳しい肉体労働を強いられる部隊に戻ってしまう。
そこで助け舟を出すのが、八木(妻夫木聡)である。
「意見具申いたします」と割って入る。勧善懲悪の『桃太郎』が受けなかったのだから、こういう勝ち負けのつかないものがいいという八木の意見を島はあっさり聞く。あまりにあっさり。でも、もともと島は人がよさそうに描かれているので、まあいいだろう。
それより、なぜ、審査の場に、位の低い八木がいるのか。こういうこと(たぶん文化方面)に詳しいから特別に参加していた。ご都合主義的としかいいようがないが、これもまあいい。
ここで重要なのは、あくまで嵩が『双子の島』という、ふたつの国が争わない提案を考えたことだからだ。
嵩が八木に感謝を述べると、八木は相変わらずクールに振る舞う。謎めいた八木は気になる存在だし、なにかと助けてくれるし、非常にいい存在である。妻夫木聡がいい感じに影のある雰囲気を出している。
こうして無事に紙芝居を披露することになった。
だが、双子だったので仲良くしようという、嵩の渾身のくだりで、中国人たちはげらげら笑う。泣く場面のはずなのになぜ?と思ったら、通訳が勝手に訳を変えていた。「おまえと同じ顔なんてちゃんちゃらおかしい」と相手を認めないエンドに改ざんしていたのだ。紙芝居だからまだしも、重要書類だったら大変なことである。
人の良い嵩は、共生をテーマにしているので、みんなで笑えるのならそれがいいと考える。
とはいえ、笑ったからといって平和的かというとそんなことはない。この場面で、中国の人たちは、日本人を馬鹿にしているように筆者は感じた。でも嵩たちは中国語がわからないので、相互理解は深まらない。八木くらいしか中国語がわからないというのもいかがなものか。仲良くしたいならまず言葉を習うことからはじめたほうがいいのでは……。