
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第56回(2025年6月16日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
「あんぱん」前半のハイライト
副題「逆転しない正義」の週
粕谷軍曹(田中俊介)が険しい目で「これを描いたのはおまえか」と嵩(北村匠海)を問い詰める。
叱られるのか? 褒められるのか?
答えは、褒められた。
それより第12週のサブタイトルは「逆転しない正義」(演出:柳川強)である。全26週ほどあるドラマのなかで、最大テーマの「逆転しない正義」をサブタイトルにする週。前半のハイライトに違いない。
嵩がオリジナルの紙芝居「双子の島」を作る。まだ「アンパンマン」ではない。はたして、双子の島とは?
まずは、第56回の流れを追っていこう。
粕谷軍曹に「じつにうまいな」と絵を褒められた嵩は、宣撫班に配属された。
宣撫班に入れば塹壕を作るような肉体労働をしなくて済むとうらやましがる馬場(板橋駿谷)たちに、八木(妻夫木聡)は宣撫班とは「医療活動や娯楽で、日本軍に親しみを深めさせ、占領に協力させることを目的としている」と説明する。
このとき馬場たちは塹壕作りではなく、チクチク縫い物をしている。塹壕作りもいやだが、縫い物もいやなのだろうなあ。