タイトルづくりで使える「3つの視点」
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

覚えておくと便利な「自分ごと・あなたごと・社会ごと」
プレゼン、レポート、講演、セミナー、勉強会などの資料でタイトルを考える際には「定型」に当てはめて考えるのがおすすめ、と前回記事ではお伝えしました。
代表的な定型表現は以下になります。

今回はこの「定型表現」を応用する方法として、「自分ごと・あなたごと・社会ごと」を紹介します。
ぼくが編集者として手がけてきた本には、少し変わったタイトルがいくつかあります。『バナナの魅力を100文字で伝えてください』『パン屋ではおにぎりを売れ』などです。
このうち、バナナの本は「伝え方」、おにぎりの本は「思考」をそれぞれテーマにしているのですが、この2冊に共通して書かれているノウハウとして「自分ごと・あなたごと・社会ごと」があります。
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「自分ごと」は自分の関心があること。
「あなたごと」は家族、友人、会社の同僚など、自分と関係が深い人や自分に近しい人に関係があること。
「社会ごと」は社会的関心や流行などです。
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たとえば、次のような案が考えられます。
●自分ごと
朝5分で作れる! 疲れ知らずの健康レシピ
→読者「個人」の時間や体調という身近な課題に焦点を当て、自分自身のメリットとしてとらえてもらう表現です。
●あなたごと
家族が笑顔になる時短健康ごはん
→読者の「家族」という身近な存在に焦点を当て、大切な人の喜ぶ姿をイメージしてもらう案です。
●社会ごと
食べて守る! 地産地消の簡単レシピ100
→環境問題や持続可能性という「社会」的課題と結びつけた表現です。
「自分ごと・あなたごと・社会ごと」と同じようなことは、経営者に取材しているときも、事業構想におけるコアとなる考え方として挙げる方が何人もいらっしゃいました。
この3つの視点は、タイトルから事業開発まで幅広い領域で応用可能といえるのかもしれません。
タイトルを考えるとき、企画を考えるとき、新規事業を考えるとき……ぜひ思い出してみてください。
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。
※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。