「ビジネス書なのに、なぜか子供が夢中で読んでます!」
こんな感想が寄せられているのが、2024年の年間ベストセラー4位(ビジネス書単行本/トーハン調べ)となった話題の書頭のいい人だけが解ける論理的思考問題だ。論理的思考問題とは、知識や難しい計算はいっさい不要で、「考える力」のみが問われる問題を指す。小中学校の受験問題、就職試験問題、Google、Apple、Microsoftといった超一流企業の採用試験などでも出題され、これまでの正解が通用しない時代に必要な「思考力」を鍛える“最高の知的トレーニング”でもある。
ではこの論理的思考問題、人間よりも賢いと言われる「AI」は解くことができるのだろうか? この記事では、本書から1問を選んでAIに出題し、思考の過程と、導き出した回答を紹介しよう。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

「なぜか子供がどハマりしている!」との声も。異例のビジネス書で紹介されている問題『3つのフルーツボックス』を、AIは解けるのか?問題文は書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』より

人とAI、「頭がいい」のはどちらか?

 論理的思考問題は、世界中で創作され、何百年にもわたって楽しまれてきました。
 この「人が創り、人が解いてきた」問題、人間より賢いと言われる「AI」は解くことができるのでしょうか?

 そこで、「論理的思考問題」の定義をしたうえで、書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から1問を抜粋して、AIに下記のように聞いてみました。

「論理的思考問題」と呼ばれるものがあります。以下が、その特徴です。
 ・知識や難しい計算は不要で、問題文を読んで論理的に考えれば答えが出せる
 ・必要な情報は、問題文に書かれていることのみ

 上記の定義を踏まえて、下記の「論理的思考問題」を解いてください。


「3つのフルーツボックス」
 3つの箱がある。箱はそれぞれ、以下のとおり。
「リンゴが入れられた箱」「ミカンが入れられた箱」「どちらかがランダムに入れられた箱」
 当初、箱には『リンゴ』『ミカン』『ランダム』と、正しいラベルが貼られていた。
 しかし何らかの力によって、すべてのラベルが間違った箱に貼り直された。
 3つの箱の中身を特定するには、最少でいくつの箱を開ければいいだろうか?

 なおAIは「ChatGPT 4o」を使用し、AIへの質問とAIによる回答の内容は実際のものから変えずに、文字のサイズ、色、太さの変更のみ編集しています。

 さて、AIの回答はいかに?

AIの回答

 この「3つのフルーツボックス」の問題は、論理的思考の定番問題の一つです。

 結論から言えば、たった1つの箱を開けるだけで、3つすべての箱の中身を特定できます。

 

 ■論理展開

 箱には次の3つのラベルが貼られています:

「リンゴ」
「ミカン」
「ランダム(リンゴまたはミカンのどちらか)」

 

 しかし、すべてのラベルは間違っている、というのがポイントです。つまり:

 ・「リンゴ」と書かれた箱にはリンゴは入っていない
 ・「ミカン」と書かれた箱にはミカンは入っていない
 ・「ランダム」と書かれた箱にはランダムではない(=リンゴかミカンのどちらか一方が確定で入っている)

 

 ■解法ステップ

 ①「ランダム」と書かれた箱を開ける

 → ラベルがすべて間違っているので、「ランダム」と書かれた箱にはランダムで入っているわけがない

 つまり、この箱にはリンゴだけまたはミカンだけが入っている。
 たとえば、開けてみてリンゴが入っていたとする。

 

 ②「ランダム」=本当は「リンゴ」

 ・なので、「ランダム」の箱の正体は「リンゴ」

 ・「リンゴ」と書かれた箱にはリンゴは入っていないので、残る選択肢は「ミカン」か「ランダム」

 ・しかし「ランダム」はもう正体が判明している=排除
 → よって、「リンゴ」のラベルが貼られた箱の中身は「ミカン」

 ・最後に残った箱は「ミカン」と書かれているが、ミカンではないし、リンゴでもないので
 → 中身は「ランダム」

 

 ■結論

 答え:1箱だけ開ければ3つの箱の中身をすべて特定できる。

 箱を開けるときは、「ランダム」とラベルされた箱を選ぶのがポイントです。

 ふむふむ、なるほど…。
 なんだかわかる気もしつつ、途中、ちょっと説明が雑な部分があるように感じます。

AI回答の「論理の飛躍」?

 それは、この部分。

 ・「リンゴ」と書かれた箱にはリンゴは入っていないので、残る選択肢は「ミカン」か「ランダム」
 ・しかし「ランダム」はもう正体が判明している=排除
 → よって、「リンゴ」のラベルが貼られた箱の中身は「ミカン」

「ランダム」と書かれた箱の中身が「リンゴ」であったからといって、「リンゴ」と書かれた箱の中身が「ランダム」である可能性は排除できないと思います。

 ここ、AIにつっこんでみましょう。

 ・「リンゴ」と書かれた箱にはリンゴは入っていないので、残る選択肢は「ミカン」か「ランダム」
 ・しかし「ランダム」はもう正体が判明している=排除
 → よって、「リンゴ」のラベルが貼られた箱の中身は「ミカン」


 ここ、ちょっとおかしくないですか?
「ランダム」と書かれた箱の中身が「リンゴ」であったからといって、「リンゴ」と書かれた箱の中身が「ランダム」である可能性は排除できないと思います。

 さて、AIはどのように返答してくるでしょうか?

AIの回答②

 ご指摘、まったくその通りです。

 論理の展開に飛躍がありましたので、正しく整理し直します。

 

 ■問題の要点(再掲)

 3つの箱:

 ・A:「リンゴ」
 ・B:「ミカン」
 ・C:「ランダム(リンゴまたはミカンのどちらか)」
 すべてのラベルは間違っている。
 つまり、ラベル通りの中身は絶対に入っていない。

 

 ■正しい論理展開

 ステップ1:まず「ランダム」と書かれた箱(C)を開ける

 これは常に正解の糸口になります。なぜなら:

 ・「ランダム」と書かれている → 中身はランダムではない(=リンゴ or ミカンのどちらかに確定)
 ・つまり、この箱の中身は「リンゴだけ」か「ミカンだけ」

 仮に、中身がリンゴだったとします(以下、リンゴの場合で説明)。

 

 ステップ2:C箱の正体が「リンゴ」と確定

 したがって、「ランダム」というラベルの箱の中身は「リンゴ」
 → C箱は本当は「リンゴ」

 

 次に、残った2つのラベル:

 ・A:ラベル「リンゴ」→ 中身はリンゴ以外(=ミカン or ランダム)
 ・B:ラベル「ミカン」→ 中身はミカン以外(=リンゴ or ランダム)

 

 ここでポイント:

 ・C箱が「リンゴ」」だと分かったので、他の箱は「ミカン」と「ランダム」
 ・ただし、Aにはリンゴは入っていない、Bにもミカンは入っていない

 

 なので:

 ・A:「リンゴ」ラベル → 中身はミカン or ランダム → でもリンゴ以外なのでOK
 ・B:「ミカン」ラベル → 中身はリンゴ以外 → でもリンゴはCにあるので、ここには入れられない
 →よって、Bは「ランダム」

 →すると、残るAは「ミカン」

 

 ステップ3:結論

 中身の対応は以下のようになる:

 ・ラベル:ランダム(Cの箱)→ 実際の中身:リンゴ(ランダムではありえない、よって確定)

 ・ラベル:リンゴ(Aの箱)→ 実際の中身:ミカン(ラベルは間違っている+他2つで選択肢消去)
 ・ラベル:ミカン(Bの箱)→ 実際の中身:ランダム(ラベル間違い+他2つの中身確定により)

 

 ■改めての答え

 最少1つの箱を開けるだけで、3つすべての中身を特定できる。
 ただし開けるべきは、「ランダム」と書かれた箱。

 

 ご指摘により、推論がより厳密で明晰になりました。ありがとうございました。

 今回は、ちゃんと理解できる内容になりましたね。
 ではこの回答、正しいのでしょうか?

 次ページで、書籍で紹介した解説と回答を紹介します。