――今、官民挙げてAI開発での強いポジションを占めようと目指すのは、AIによるサイバー犯罪抑制にも役立つということですね。

 はい。AIが脅威になる時代においてサイバー防衛をどうしていくかは、次の三択があります。やらない、自国でやる、米国と組んでやるという3つです。

 やらないはないし、自国でやるのは限界があります。となると、ミサイル防衛もそうですが日米で組むしかありません。

 ところが米側からは、日本はまだ一緒にやれるレベルでないとの声を聞きます。懸念の1つだった情報管理のためのセキュリティクリアランス制度が5月に始まりました。このように徐々にですが、整備していくしかありません。

 その上で、ここは米国と組みましょう、ここは日本が自前でやりましょうと分担を分けていく。

――その仕組みだと米国に主導権を取られそうです。

 サイバー防御の実力差でいうと、日本1に対して米国100です。技術の問題もあるのですが、米国が世界中の通信やネットの情報を持っている点が圧倒的に有利なのです。ネットワーク、クラウド、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)、SNS、EC、広告配信などの多くは米国が握っています。

 自国の領域を通っていく情報量に従い、できることは変わっていきます。日本の情報量は、自国のほんの少ししかない。だからこそ、米国と組めるようにするのが重要なのです。

残念ながらサイバー犯罪は個人では防げません…ITエンジニアすら被害に遭う巧妙な手口、打つ手はないのか?