すなわち、シニア男性において、副菜重視の日本食を続けることによって、生物学的老化が遅延できることがわかったのです(図3-9)。

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また、「寿命の回数券」として知られているテロメア(編集部注/染色体の両端にあるDNAとタンパク質の複合体)の長さを年齢で調整してみた結果も、生物学的年齢加速と同様な関連が認められました。
なお、肉類、卵を多くとっている西欧風の食事パターンについては、食事パターンスコアと生物学的年齢、テロメア長とのあいだに関連が認められませんでした。
「動楽」と「食楽」の実践で
健康なシニアになれる
ここで紹介した研究は、魚、野菜、きのこ、いも、海藻、大豆製品などの食品摂取を特徴とするヘルシーな日本食が、メタボならびにロコモを予防する働きがあることも示唆しています。これらの結果は、健康に対する食事の重要性をエビデンスで示したこととなり、栄養指導の現場において、有益な資料となると思います。
シニアの方々も、日頃より、主食、主菜、副菜、乳製品、果物を揃えたヘルシーな食事を心がけて、アクティブ・ライフを送っていただきたいものです。

最後にもうひとつ、付け加えたいことがあります。内臓脂肪の蓄積を運動習慣や食事摂取状況と関連させて検討した結果、男性中高年者では、中・高強度の身体活動量(MVPA)と食事(ヘルシー日本食パターンスコア)は、それぞれ独立して内臓脂肪の蓄積に影響を与えていることがわかりました。すなわち、健康づくりには運動と食事の両方の視点が必要だということです。
私は運動・スポーツを健康のための手段でなく、それ自身が目的となることを願って、「動楽」を提唱しています。そして、食事も「栄養がある」とか、「健康にいい」というだけでなく、健康によいものを楽しく食べるということで、あわせて「食楽」もお奨めしています。
科学的エビデンスをふまえても、やはり「動楽」と「食楽」が、アクティブ・シニアであり続ける最大の秘訣だと確信しています。