「おもしろい人が撮る写真はおもしろい」写真とビジネスに共通するAI時代を生き抜く鍵とは?写真:幡野広志

ぼくが思うおもしろい人

 おもしろい人って経験が豊かで、自分がしっかりあって、他人の目を気にしない人だ。他人の批判を気にしないし、他人の意見に左右されない。そういう人の言うことや、やることはおもしろい。そういう人は自分のやりたいことが見つけられるから経験が増えてさらにおもしろくなる。お金持ちがどんどんお金持ちになることと似ている。

 つまらない人はこの逆で、他人の目を気にして、他人の意見に左右される。他人がいいと言うものに合わせて、誰かに「これがダメ」と言われたら、「ダメなんだ」とそのまま受けいれてしまう。おもしろさには格差がある。

 おもしろい人は会話の達人でもある。おもしろい人はどんなに偉くても自慢話はせずに、相手の求める話ができる。だから多くの人が、おもしろい人の言葉に耳を傾けるのだと思う。忘年会でおもしろい人の周りの席がすぐに埋まることとおなじだ。ネガティブな話でも笑いをとることができる。ひとつの話題からいろんな話に枝分かれさせる引き出しを持っている。たくさんのことを知っていて、たくさんのことを経験している。

 おもしろい人になるのはそんなにむずかしくもなくて、本や音楽や芸術に触れるだけで充分おもしろい人になれる。

失敗を乗り切るユーモア

 15年以上前に読んだ写真雑誌のコラムが大好きで、いまでも鮮明に覚えている。

 あるフォトグラファーが俳優さんを撮影する仕事で、現場についてカメラバッグをあけたらカメラが入ってなかったそうなんです。フォトグラファーとしてはありえない大失敗なんですよ。

 フォトグラファーは近くの売店で写ルンですを買ってきて、それで撮影をしようとするんですけど、写ルンですで俳優さんを撮影するって、それもまぁありえない話なんですよ。当時はいまみたいに写ルンですに「エモい」なんて価値はないです。いまで言えば中判デジタルカメラを忘れて、スマホでタレントさんを撮影するようなものかな。当時は大きいカメラ=いいカメラというイメージが根強かったんです。