SNSで話題『チリンの鈴』のオマージュ?

 

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 リンの住む村は日本の軍隊に攻撃され、父母が死んだ。母を撃ったのは他ならない岩男だった。

「お父さんの形見の銃で岩男を撃った。でも僕の心はちっとも晴れない」とリンは八木に嘆く。なんとも哀しい話である。仇と思って付け狙ったものの、なついているフリが次第にほんものの感情になっていったのだろう。愛憎が入り混じってリンの心を引き裂いた。

 岩男も命を狙われていることを覚悟しながら、リンをかわいがってきたのだろう。この話はやなせたかしの絵本『チリンの鈴』のオマージュではないかとSNSではささやかれている。タイミングよく24日深夜(25日)にEテレで放送されるので見てみたい(ただし原作絵本とアニメは相違点がある)。

「リンが悪いか。岩男の仇をとりたいか」

 八木は嵩を問い詰める。

 嵩は「わかりません」としか言えない。

 八木は珍しく感情を昂らせ「守備隊心得」の張り紙を破る。そこには「東亜諸国の共存共栄」「占領地の保全と安寧確立」「占領地良民を己が同朋兄弟と心得愛護善導育成すべし」と書いてある。口当たりのいいことが書いてあるが、実際にやっていることは奪い合いや殺し合いなのだ。

 八木は以前、生き残るには卑怯者になれと嵩に教えていた。卑怯者になるにはこの戦争の実体に目をつむらないといけない。でもここで八木のクールな仮面がはがれる。

「卑怯者は、忘れることができる……だが、卑怯者でない奴は、決して忘れられない……おまえはどっちだ? どっちなんだ!」

 生きるために斜に構えていた八木だったが、現実の残酷さを見過ごすことができなくなっていた。

 嵩はもう一度「わかりません」と言う。

 制作統括の倉崎憲チーフプロデューサーはこの場面をこう解説する。

「『わからない』という言葉こそが第13週以降の戦後、嵩が自分自身に問いかけ続けるテーマなのだろうなと。それがのちに『逆転しない正義とは何か』にもつながっていくわけですが、この時点ではまだわからなかったのだと思うんですよ。わからないことは何なのか、嵩が人生をかけて、それこそ『アンパンマン』にたどり着くまでずっと探し続けるのだろうと思いました」(Yahooニュースエキスパート「「おまえはどっちだ?どっちなんだ!」妻夫木聡の凄まじい芝居を前に北村匠海が思わず口にした言葉とは」より)