
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。
ひとつの妖怪が国内製薬・検査薬・医療用品業界を徘徊している。ダルトンという妖怪が――。
『共産党宣言』の出だしをもじればこのようなところだろうか。6月の株主総会を控えた状況である。
ダルトンとは、アクティビスト、すなわち「物言う株主」として名高い米投資ファンドのダルトン・インベストメンツのこと。フジ・メディアホールディングス(HD)を巡り、社会の注目を集めているが、その影では複数の製薬会社や検査薬メーカーなどに株主提案を行っている。
製薬業界ではあすか製薬HDがターゲットとなった。23年11月にダルトンは、共同保有者分とともに5%超の同社株式の取得を関東財務局に報告。「重要提案などを行うこと」を目的に明記した。これを受け、あすか製薬HDも同月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を公表して沈静化を図ったが、ダルトンとの共同保有者である英投資ファンドのニッポン・アクティブ・バリュー・ファンド(NAVF)を通じて今年4月、株主提案を受けるに至った。
株主提案は、自社株買いを行うことや取締役の過半数を社外取締役にすることなど3項目。5月12月にあすか製薬HDは反対を表明した。ダルトンが共同保有者分も含めると2割前後の株式を持つなかで、6月24日開催予定の株主総会に対決の場は移る。
そもそもあすか製薬HDがダルトンの標的となるのは初めてではない。ある同社関係者は「約20年前にも保有された因縁がある」と振り返る。