
医薬品業界で投資ファンドの存在感が高まっている。米大手投資ファンドのベイン・キャピタルは今年2月、三菱ケミカルグループから、約5100億円で田辺三菱製薬を買収すると発表した。そのベインによる田辺三菱の「切り売り」が囁かれている。
ヘルスケア領域で豊富な支援実績があるベインは、投資先のバイオテック企業が日本に進出する際の足掛かりとして、田辺三菱と連携することを期待。田辺三菱にとっても海外新薬を開発・販売して成長が望めるとの筋書きを描く。日本進出をめざす企業のための「プラットフォーム」として田辺三菱を再構築し、価値を高めようとの目論見だが、逆に言えばそれ以外の事業は売却が視野に入るようだ。別の米大手投資ファンドの関係者は次のように予想する。
「まず、バイオテックと直接関係のないOTC薬事業は売却候補になるだろう。工場もいくつか売却されるかもしれない。それから北米で販売が好調な筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬『ラジカヴァ』に関しても例外ではない。交渉ではベインが田辺三菱の北米事業も支援するという話が出たようだが、有望な新薬があるわけではない。29年にラジカヴァの北米での基本特許が切れる見通しで、それまでにいかに高く売るか。溶けるアイスクリームを売るようなもので早いほどいい」