改正により高収入の人の保険料負担が増えることになる。「65万円」は社会保険料を計算する上での「標準報酬月額」のことで、各種手当を含む月収63.5万円~66.5万円が「65万円」の等級に該当する。ボーナスが年2回2カ月分ずつあるとすると、年収換算で約1000万円以上の人が影響を受けるイメージだ。

 現状では月収65万円の人も70万円の人も80万円の人も、引かれる保険料が同じなので将来の年金額は同じになる。制度改正後、高収入の人は保険料負担が増えるが、将来の年金額は増えるメリットがある。

 厚生労働省の試算によると、月収75万円以上の人は改正により保険料(本人負担)が月約9000円増える。年金額は、10年間その年収に該当すると月約5000円、20年だと月約1万円アップする。

 高収入の人は、これまで収入に応じた年金額をもらえていなかったので、悪い話ではないと思う。

 ちなみに現状で標準報酬月額65万円以上は全体の7.1%なので、90%以上の人は保険料引き上げの対象外である。

(2)年金を受け取りながら働いた場合の年金カット(在職老齢年金)の見直し
→年金カットが減ると、手取りが増える

 年金を受け取りながら働いて「給与+年金」の合計額が一定の基準を超えた場合、年金が減額される制度がある。これを「在職老齢年金」という。

「年金が減らされるくらいなら、働きたくない」と言った声を聞くこともある。

 働いて厚生年金保険料を払うと、その分年金額が増えるメリットもあるのだが、「将来の年金より、今の年金が大事」と考える気持ちはわからなくもない。何より「年金が減らされる」のが我慢ならないと言う。おっしゃる通りですね。

 昨今、人手不足は深刻な問題だ。こうした高齢者の働き控えの解消は喫緊の課題ということで、在職老齢年金の基準額の見直しが実施される。

 現在の基準額は月51万円(今年度価格)。「ボーナスを含む年収の12分の1の賃金月額」と「厚生年金の月額」の合計額が基準額を超えると、年金の一部カットがはじまる。合計額が多いと(たいていは給与が多額のケース)、年金が全額支給停止になることもある。