社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を、本書から編集・抜粋して紹介します。

「5年後どうなりたい?」に答えられないあなたへ――【やりたいこと迷子】1000人との対話で気づいた、たった1つのことPhoto: Adobe Stock

「5年後、どうなりたい?」に答えられなくても大丈夫

突然ですが、「5年後、どうなりたい?」という質問に答えられますか?

私はこの質問が苦手です。明日、何が起きるかわからないのに、5年後のことなんて考えられないよ……、と途方に暮れてしまいます。

「やりたいことをやっている自分を想像して、理想のビジョンを思い描けばいいんだよ」と言われても、今やりたいことを5年後もやりたいと思っているかわかりませんし、そもそもそれが本当にやりたいことなのかと考えると、そうとは言い切れないような気もします。

このように「あなたのやりたいことは?」と問われてもピンとこない人、私以外にもたくさんいると感じています。

というのも、私はGallup認定ストレングスコーチという仕事を通じて、これまで1000人以上の方とお話ししてきましたが、「正直言うと、5年後どうなりたいか、何も思い浮かびません」やりたいことがわからない。どうすればいいですか?」という相談を数多く受けてきたからです。

「やりたいことがない」は世代・職種を超えた悩み

10代から60代まで、学生、会社員、経営者、主婦など、多様な背景を持つクライアントとお会いしましたが、年齢や職業に関係なく、やりたいことが見つからないと悩んでいる方が多くいらっしゃいます。

例えば、20代~30代の若手のビジネスパーソンで、仕事でも活躍し、はたから見れば何の悩みもなさそうに見える方でも、「SNSで元同僚の『転職してやりがいを見つけた』という投稿を見て心がざわつき、今の会社で無難に過ごしている自分に嫌気がさした。でも、やりたいこともわからず、毎日、悶々としている」というような悩みを打ち明ける方は多いです。

また、人生のある時期にさしかかったときに、突然、「やりたいこと」がないことに気づく方もおられます。

例えば、子どもが巣立ったとき。「これまで“お母さん”という役割が全てだったので、突然時間ができて自分が何者なのかわからなくなり、『これからは自分のためにやりたいことをやろう』と思っても、やりたいことが何も思い浮かばない……」と、相談に見える方もおられます。

ミドルエイジの方からは次のようなご相談も多いです。

会社で一定の地位まで上り詰め、先も見えている。定年も見据えて将来を考えたいけど、会社以外の世界を知らず、趣味らしい趣味もない。惰性で過ごすのは嫌だけど、何をすればいいのかわからない……

実際に統計調査を見ても、やりたいことがわからない人は少なくないようです。

キャリアに関する実態プレ調査」(リクルートワークス研究所・2023年7月)によると、就業者を対象に「働く時間や場所、金銭、年齢、家族のケアなどの事情を全く気にしなくてよいとしたら、自分の仕事や職業についてやってみたいことは何ですか」と質問したところ、43%の人が「やってみたいことはない・わからない」と回答したそうです。そして多くの方が、そのことに悩んでいるように見えます。

この悩みに対して提示される解決策の多くは「やりたいこと」の探し方、ですが、私はこの方法には、合う人と合わない人がいると感じています。

*本記事は、しずかみちこ著『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。