【社説】イラン巡るMAGA孤立主義者の誤りPhoto:Majid Saeedi/gettyimages

 メディアにはイランを巡る「MAGA(米国を再び偉大に)派の内戦」に関する報道があふれているが、注目すべきは、最も声高な孤立主義者たちがこの論争に敗れつつあるように見えることだ。彼らが現在の歴史的な局面や大半の共和党員の考え、何よりもドナルド・トランプ米大統領について読み誤ったことは考察に値する。

 まず脅威と任務について。ベトナム戦争後の左派のように、新右派の孤立主義者たちは米軍による介入をすべて大惨事につながる「滑りやすい坂道」と見なしている。彼らはベトナム症候群の代わりにイラク症候群に苦しんでいる。この症状になると、米国が介入すれば必ず「国造り」の泥沼にはまり、破滅的な状況にさえ陥ると考えてしまう。

「イランと戦争になれば1週目で何千人もの米国民の命がたやすく奪われかねない」と、FOXテレビ元司会者のタッカー・カールソン氏は6月4日に記した。「戦争になれば、原油相場の急騰が手に負えないほどのインフレを引き起こし、わが国の経済が崩壊する可能性もある。ガソリンが30ドルになった場合の影響を考えてみるといい」とも述べた。さらに、ロシアや中国、そして両国を含む新興国グループ「BRICS」を引き合いに出し、「イランに攻撃すればいとも簡単に世界大戦になり得る。われわれは負ける」と主張した。

 エリザベス・ウォーレン上院議員は、それが「新たな終わりなき戦争」になると警告した。このことは、米国の後退の美徳について、右派のポッドキャスターと左派の進歩主義者の意見が一致しつつあることを示している。

 戦争は予測不可能で、熟慮が必要なリスクを常に伴う。だが今のところイスラエルがこの戦争で優位に立つ中、戦争は地域的に拡大しておらず、ましてや世界的な拡大は見られない。イランはイスラエルに反撃しているが、ミサイルの数は日を追うごとに減っている。ロシアと中国は関与を避けている。中国の習近平国家主席は17日、「軍事衝突は解決法ではない」と述べた。