トランプ大統領Photo:Anna Moneymaker/gettyimages

トランプ「相互関税」の手前勝手
強国の保護主義、自国利益が唯一の基準

 トランプ政権発足後3カ月弱が経過したが、この間の関税政策を巡るトランプ大統領の言動は世界を混乱させるだけでなく深刻な危機をもたらしている。

 とりわけ「相互関税」は、すべての貿易相手国に一律10%の関税を課したほか、日本を含め約60カ国・地域には、“不公正な貿易慣行”を理由に高率の上乗せ関税を発動した。

 これまでの貿易体制の下で米国は他国から不当な不利益を被ってきたとして、相手国が課す関税と同様の関税を課すというのだが、その相互関税率も極めていい加減な算定によることが明らかになってきている。

 その後も、米国株式や国債などの金融市場が不安定化すると上乗せ関税の発動の「90日停止」を決めたり、海外に生産を依存するスマートフォンやノートパソコンなどを突如、対象から外したりと、手前勝手さがばかりが目立つ状況だ。

 そもそも世界一の経済大国が、自国製造業の再興のため投資を行わない限り関税の高い壁を張り続けるという保護主義、かつ力を背景に相手国の同調を求める傲慢さは国際社会からの信頼を失いつつある。

「同盟国は何時までも同盟国でない」とうそぶき、不動産取引のように相手を揺さぶり、国際社会の規範より自国利益を唯一の基準としているようだ。忠実な同盟国であり、安全保障面でも経済面でも大きく米国に依存する日本といえども、自らの国益を守るため防衛策を考えなければならない。

 今週には、赤沢経済再生相が訪米し、ベッセント財務長官らと、相互関税には入らなかった自動車への25%関税も含めトランプ関税の撤回・見直しの交渉が始まるが、当面の対応策だけでなく日本は自由貿易体制維持で「脱米国依存」の大きな戦略を考える時だろう。