
イランの弾道ミサイルが、イスラエル中部にある最大の商業都市テルアビブや北部の都市ハイファに大量に降り注いでいる。イスラエルの主要空港は閉鎖され、労働人口の多くが防空壕(ごう)との間を行き来している。ほとんどの国の場合、このような戦時下シナリオでは投資家が退避し、市場が急落する事態となるだろう。
だが、いま起きているのは逆の現象だ。イスラエルの市場は活況を呈し、世界の市場をアウトパフォームしている。イスラエル株(日曜~木曜に取引)は堅調に値上がりを続け、中東の紛争が長引く懸念から世界の市場が慎重な値動きとなる中、テルアビブ125種指数とも呼ばれるTA-125指数は、先週末まで5日続伸していた。米国がイランの核施設を攻撃したのを受け、22日に一段高となった。
何が起きているのか。
一つには、地元投資家が戦時下の状況に慣れていることで説明がつく。それと同時に、市場はイスラエルの置かれた立場と戦略に対する新たな自信ものぞかせる。ドナルド・トランプ米大統領が イランの核施設を攻撃 する決断を下したことは、その認識を一層強めることになった
イスラエルの資本市場の大部分は国内で保有されている。地元投資家は断続的な紛争を長年経験し、戦争が経済に与える打撃が長引くことはめったにないと学んでいる。彼らにとって相場急落は往々にして買いの好機となる。最近の紛争でも市場は短期間に反発する傾向を示しており、当初は下落するが、その後に持続的な回復を見せる。
実際、イスラエル経済は、予備役の大量動員や複数戦線での戦いが続いているにもかかわらず、約2年前にパレスチナ自治区ガザで戦争が始まって以降、驚くべき強じんさを保っている。同国経済は依然として成長し、失業率は数十年ぶり低水準の3%前後を維持する。ただ、この数字には一部、外国人労働者の国外退避や多くのパレスチナ人の労働許可取り消しによる最近の労働供給ショックも反映されている。テルアビブのIBIインベストメントハウスのチーフエコノミスト、ラファエル・ゴズラン氏は、財政赤字は戦争前の水準から拡大したものの、全体として経済は持ちこたえていると指摘する。