「元気なのに今日はここまで」…精神科医がうつ病を克服した“非常識な判断基準”
誰しも悩みや不安は尽きないもの。寝る前にイヤなことを思い出して、眠れなくなるなんてことも……。そんなときの助けになるのが、『精神科医Tomyが教える 1秒で元気が湧き出る言葉』(ダイヤモンド社)など、33万部突破シリーズの原点となった『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)だ。ゲイのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症……苦しんだ末にたどり着いた、自分らしさに裏づけられた説得力ある言葉。心が落ち込んだとき、そっと優しい言葉を授けてくれる“言葉の精神安定剤”で、気分はスッキリ、今日一日がラクになる!

うつ病を経験した精神科医として
私がたどり着いた再発予防の知恵
私は精神科医として、多くのうつ病患者さんの回復を支援してきましたが、実は私自身もかつて重いうつ病を経験しました。
最も辛かったのは約1年間。そして完全に回復するまでには、2~3年という時間がかかりました。
そんな私が、いま強く伝えたいのは、「再発を防ぐためには“やりすぎないこと”が何よりも大切だ」ということです。
私がうつ病になった背景
悲しみと仕事に押し潰された日々
うつ病のきっかけは、当時のパートナーとの別れと、ちょうどクリニックを開業したタイミングが重なったことでした。
深く悲しむ間もなく、すべてを一人でこなさなければならず、気がつけば“感情を置き去り”にして突っ走っていました。
その最中に、本の出版やテレビ出演の依頼が舞い込みました。正直、寂しさを紛らわすために、それらの仕事に“ノーブレーキ”で没頭したんです。
本来、私はのんびりした性格で、どちらかというと怠け者。でも、休んでしまうと、ふとパートナーのことを思い出してしまう。
だから、あえて休まず動き続けることで、自分をごまかしていたんですね。その結果、心も脳も限界を超えてしまい、本格的にうつ病を発症してしまったのです。
回復の鍵は「やりすぎないこと」
でも、それが難しい
うつ病から少しずつ立ち直っていく中で、私が最も強く感じたのは、「もう二度と、あんな状態には戻りたくない」という恐怖でした。
そして、その思いが、「やりすぎないこと」を守る原則へとつながっていきました。
でも、“やりすぎない”って、簡単なようで難しいんですよね。だからこそ、私は自分なりに、日々のなかで意識しているポイントがあります。
脳の疲れに気づくために
私が見ている4つのサイン
体は元気でも、脳は先に疲れていることがあります。その疲労に気づけるかどうかが、本当に大切なんです。
私は以下の4つのサインを「やめどきのサイン」として観察しています。
● 感情がネガティブに傾く
● 余裕がなくなる
● イライラすることが増える
これらが少しでも現れたら、私はその日の作業を“そこで打ち切る”ようにしています。
「まだやれる」は落とし穴
だから私は、疲れる前にやめる
かつての私は、「時間があるなら、まだやれる」と思って動き続けていました。でも今は違います。
たとえやるべきことが残っていても、頭がクリアじゃないと感じたら、その日はもう手を止めると決めているんです。
脳が元気なときにやる仕事のほうが、質も高いし、効率もいい。逆に、脳が疲れてから無理して続けた仕事は、大抵やり直しになるか、クオリティが下がる。
だから、時間が余っていても「今日はここまで」と決めることが、私にとっては自己防衛なんです。
「明日できることは、今日はやらない」
そう決めた理由
私がもう一つ強く意識しているのは、「空いた時間に予定を詰め込まない」ということです。
かつての私は、スケジュールが空いていると、そこに仕事をねじ込んでいました。
でも今は、明日やればいいことを、あえて今日はやらない。これは怠けではなく、“再発予防の知恵”です。
やって潰れた過去があるからこそ、今は「疲れる前に止める」ことを徹底しています。
私の時間管理術
「元気なうちに」「疲れる前に」
私が徹底している時間管理の鉄則は、以下の2つです。
● そして、「疲れる前にやめる」
この感覚が身についてからは、体調を崩すことがほとんどなくなりました。
私自身、うつ病を再発させたくないからこそ、これらを最優先で守っています。
「もうひと踏ん張り」は
命とりになることもある
たとえ時間が余っていても、「もうちょっとだけ頑張ろう」は、うつ病を経験した私にとっては危険信号です。
再発を防ぐ鍵は、脳を疲れさせる前に止めること。そして、そのためには「自分の脳の調子を観察すること」が何よりも大事なんです。
私自身の体験が、同じように悩んでいる方の参考になれば幸いです。
無理をせず、自分のペースで。そして、「疲れる前にやめる勇気」を、どうか忘れないでください。
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。