
いまやドラッグストアなどに買い叩かれて儲からないだけでなく、中途半端な事業の展開はアクティビストらに格好の“口撃”材料を与え兼ねない負の存在だと、一部で認識されつつある国内OTC薬ビジネス。例えば大正製薬ホールディングスの庇護を失った養命酒製造は、旧村上ファンド系の投資会社がやにわに筆頭株主として躍り出た。また、わかもと製薬は、新興アクティビストのナナホシマネジメントから役員受け入れなどを求められている。
どちらも、昭和の時代から続く基幹ブランドを棄損させまいと努め過ぎた結果、経営や組織のイノベーションが遅れ、そこを、蚤取り眼で上場企業の瑕疵を探している連中に捉えられたといった格好だ。今後も似たケースは起きると見られ、モノ言う株主らに対等に反論できないJTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)は、OTC薬事業を漫然と抱えること自体が経営リスクと化してくる可能性すら予想される。
振り返れば国内OTC薬業界は、19年に第一三共がヘルスケア事業の売却に向けた動きに入った旨の報道がなされて以降、いつ、誰が、どのように再編を仕掛けてもおかしくない段階へと入った。そして実際には、米投資ファンドのブラックストーンが20年に武田薬品のOTC薬事業子会社・武田コンシューマーヘルスケアを買収後、24年にアジア系ファンドのMBKパートナーズに転売するなど、サードパーティーの主導による再編が非可逆的に進んでいる。直近でも、OTC薬事業を抱える田辺三菱製薬が米投資ファンドのベインキャピタルに売却されたことを受け、田辺三菱のヘルスケア事業の処遇が注目されることになった。
こうしたなか、攻守を交えてOTC薬のあり方を独自に模索し続けてきたのが日用品大手のライオンだ。半世紀以上の前の1962年に、米ブリストル・マイヤーズ(現、BMS)より技術・商標権を手に入れて販売し始めた解熱鎮痛剤「バファリン」を事業の柱に、戦前の玉置製薬からの流れを受け継ぐ「スマイル」などの点眼薬、さらには胃腸薬や下痢止め薬などを現在展開している。