
フジ・メディアHDの株主総会に参加して分かった「リアルな違和感」を紹介したい。報道されていないことも、あると思う。結論から言うと、会社が変わるきっかけは、モノ言う株主の声であることを痛感した。(未来調達研究所 坂口孝則)
フジの株主総会が終了も
あまり報道されていない違和感
2025年6月25日、小雨降りしきる中、私はいち株主としてフジ・メディア・ホールディングスの株主総会に向かった。場所は東京・有明アリーナで、前に格闘技を観戦しに訪れたことがある。まさか同じ場所で、フジ取締役会と一部の株主との壮絶な闘いを見ることになるとは当時は思いもしなかったが…。
今年のフジの株主総会で最大の焦点が、取締役の人事案だった。すでに報じられているとおり会社提案の取締役候補は全員が承認され、株主提案を出した米ファンドでアクティビスト(モノ言う株主)のダルトン・インベストメンツの人事案は否決された。他の議案も会社提案が全て通った。
ここから先は私が実際に見聞きした株主総会のリアル・リポートをお伝えする。報道されていないことも多々あると思う。
まず、今回の株主総会では、質問者は内容を1つに絞り喋るのは2分間限定だと要求された。かつ質問には取締役が答えっぱなしであったとしても、それを抑止できず再質問もできなかった。結果的に、株主と取締役との会話のやり取りがまるでなかった。
つまり貴重なコミュニケーションの場が、ずいぶんと限定的だった。あれ、なんだか見覚えのある光景…そうだ、参加メディアや映像使用を限定して大批判されたフジテレビの最初の会見に似ているなあ…。
なお株主総会の全体の長さは、昨年は2時間弱だったが、今年は4時間半だった。もちろん長いほうが、さまざまな株主の意見を聞ける。ここは頑張ったんだろう。さすがに10時間超もやった記者会見ほどではなかったが(あれは異例すぎた)。
壇上に並ぶフジの取締役たちは、優秀な会社員を経て、海千山千を相手にしてきた百戦錬磨の人たちだ。株主総会でも、株主から意見や質問を受ける→株主総会の議長である金光修氏がうまく受け流す→各取締役が無難に答える、というフォーメーションが見事に確立していた。