「変化の時代に、どう生きるか?」不確実性のなかで前に進み、自分らしい生き方を築いていくには、何が必要なのか。その問いに科学的な視点から答えるのが、アメリカでベストセラーとなった『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』だ。著者は、マッキンゼー出身でウェルビーイング研究の第一人者・ブラッド・スタルバーグ。本書では、変化を味方につけるための「思考と行動のメカニズム」が、最新の脳科学と豊富な実例によって解き明かされている。本稿ではその知見をもとに、「なんとなく動けない日々」から抜け出し、自然と動ける自分になるための科学的アプローチを紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「あとでやる」が口ぐせの人、「今すぐやる」が習慣の人――何が違うのか?
やるべきことがあるのに、ついスマホを見て時間を浪費してしまう。「今日は気が乗らないから、あとでやろう」と先延ばしにする――そんな経験は誰にでもあるだろう。
一方で、目の前のタスクにすぐ取りかかり、淡々と片づけていく人もいる。この違いは、意志の強さや性格ではなく、「脳の仕組み」によるものかもしれない。
アメリカでベストセラーとなり、多くの読者から絶賛を集めた『Master of Change 変わりつづける人』では、その脳のメカニズムについて詳しく紹介されている。
意図的な行動を取るたびに、神経伝達物質のドーパミンが放出される。ドーパミンが放出されると、気分が良くなってやり続けようという意欲が湧いてくる。
(P.236-237)
つまり、「やる気があるから動く」のではなく、「動くからやる気が生まれる」のだ。
たとえば、机の上の整理を始めたら、つい夢中になって部屋全体を片づけていた――そんな経験はないだろうか。
これは、小さな行動がきっかけとなってドーパミンが分泌され、脳が「もっとやりたい」というモードに入っている証拠だ。
このドーパミンの分泌に関わっているのが、「ワクワク回路(SEEKING)」と呼ばれる神経回路である。
神経科学者ヤーク・パンクセップによって名づけられたこの回路は、やる気を失ったり感情に流されたりすることを抑制し、主体的な行動を引き出す働きがあるとされている。
では、このワクワク回路をどうすれば活性化できるのか?
同書には、次のようなヒントがある。
今日意志を貫いてわずかでも生産的な行動を取れれば、ワクワク回路が有効になり、明日も同じような生産的な行動を取りやすくなる。
(P.239)
むしろ、完璧な行動を目指す必要はない。
たとえば、1分だけ机に向かう、5分だけ資料を読む――そうした小さな「主体的な行動」がワクワク回路を刺激し、次の行動を後押ししてくれる。
「あとでやる」が習慣化してしまうと、ワクワク回路を有効に使えなくなってしまう。
一方で、「今すぐ少しだけやる」を繰り返せば、行動は自然と習慣になり、生産的な毎日へとつながっていく。
人生に変化を起こすためには……
人生に変化を起こしたいと思いながら、何も変わらない日常を繰り返してしまう。それは意志の弱さではなく、脳のしくみによる自然な反応かもしれない。
だからこそ、「動けない自分」を責めるのではなく、小さくても主体的な行動を取ることが何よりも大切なのだ。
本書は、変化を起こすために必要な思考と行動のメカニズムを、最新の科学と豊富な実例をもとに明らかにしてくれる。
漫然とした毎日から抜け出し、人生に小さなうねりを起こしたいと願う人にとって、本書はその第一歩となるだろう。
※本稿は『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より一部を抜粋・編集して構成しました。