こうしてようやく大学を卒業すると、日高先生の紹介で宮崎の私立高校の美術教師として就職できることになったのだが、帰郷すると先生は「あの話は取られてしまった」という。「それより、ウチの教室で教えてくれ、手伝ってくれ」とも。
漫画マイスターを目指す東村アキコの遍歴は続く。父親の紹介で平日はコールセンターで働き、週末は絵画教室で講師となる。夜は漫画の創作時間となった。やがて作品が集英社の編集者の目に留まり、デビューすることになるが、次第に漫画制作の時間が増えていく。仕事を辞め、大阪へ移住することになる。大阪の生活は映画では触れられていない。そしていよいよ東京へ。
締め切りに追われ、宮崎の教室の生徒たちのことも忘れがちなある日、先生から電話が......。やがて9年間断続した先生と別離の日が......。還暦を過ぎたオヤジが漫画の最終話を読んだとき泣いてしまったが、映画でも、結末は分かっていても涙した。
前日譚「まるさんかくしかく」は
「釣りバカ日誌」と並ぶ面白さ!?
主演の永野芽郁は、役柄も年齢もぴったり。18歳の高校3年生も自然に演じる。椅子にあぐらで乗って原稿用紙に向かう姿や、遊びほうける美大生の姿がハマっている。日高先生役の大泉洋も、甲高い声で怒鳴りまくる姿がドンピシャ。原作のセリフは「描け」だけなのだが、これを「描けーっ!」と大音声で延ばしたのは、さすが名優。
東村アキコの新作が、「ビッグコミックオリジナル」(小学館)で連載中の「まるさんかくしかく」。漫画に目覚めた小学4年生の東村アキコが主人公で、宮崎市の小学校が舞台、1985年当時の生活が描かれている。これがまた面白い。「かくかくしかじか」の続編というか前日譚のような自伝的漫画である。筆者は、「ビッグコミックオリジナル」で真っ先に読むのが「まるさんかくしかく」、次が「釣りバカ日誌」かな。次号も楽しみだ。