「やろうと決めたことがあるのに、すぐにダラけてしまう」――そんな自分にもどかしさを感じ、ストレスを抱えていませんか?
勉強、仕事、筋トレ…やる気はあるのに先延ばしてしまう。多くの人が抱えるこの悩みに、心理学の視点から答えるのが、新刊『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』です。
著者は、モチベーションの研究を専門とする筑波大学人間系教授・外山美樹氏。本稿では、本書より一部を抜粋し、「先延ばしグセを解消し、決めたことをやり切るコツ」を紹介する。

【先延ばしの原因】やると決めたことを「やれる人」と「やれない人」、考え方に1つの決定的差Photo: Adobe Stock

目標の立て方次第で、その後の行動は大きく変わる

 私たちは、目標が設定されると、「今の自分」と「なりたい自分」とのギャップを認識します。

 このギャップが心理的な緊張を生み出し、人はそれを埋めようとして行動を起こします。

 ただし、どんな目標でもいいわけではありません。実は、目標の立て方ひとつで、モチベーションは大きく変わるのです。

 では、どんな目標の時に、私たちのモチベーションは高まるのでしょうか?

〈成功する確率が50%〉の目標

 一つの答えが、自分の能力に合ったレベルで挑戦できる目標です。

 ここで心理学の実験を紹介します。

 小学生を対象にした輪投げゲームを使った実験です。

 子どもたちにいろいろな距離から輪投げをしてもらいます。

 その際、それぞれの距離について、「成功する確率をどのくらい感じるか」各自に答えてもらいました

 そうしておいて、子どもたちには自由に輪投げゲームを楽しんでもらい、実験者は子どもたちがどの距離から輪投げをする回数が多いのかをこっそり計測しました。

 では、結果です。

 子どもたちは、非常に難しいと感じる距離からの輪投げを行うことは少なく、また非常に簡単だと感じる距離からの回数も少なかったのです。

 子どもたちが一番多くトライしたのは、成功の確率が50%と感じている距離からの輪投げでした。

 主観的な成功確率が低い行動に対するやる気は低く、成功確率が高まるにつれてやる気も高まります。

 ですが、そのピークは成功確率が50%の行動であり、それ以上に成功確率が高まると(課題が簡単になると)やる気は低下します。

 このように、成功確率とやる気の強さは逆U字の関係にあることがわかりました。

【先延ばしの原因】やると決めたことを「やれる人」と「やれない人」、考え方に1つの決定的差「モチベーション」と「目標の困難度」の関係。難しすぎると、やる気が出ない。簡単すぎても、退屈に感じてしまう

難しいが、達成可能に思える目標

 つまり、ここでのポイントは、「難しいが、可能な目標」になります。

 難しい目標の設定は、パフォーマンスを高める以外にも大きなメリットがあります。

 設定した難しい目標を達成することによって、自信や達成感、満足感が高まります。

 みなさんもおそらくご存じでしょう。

 難しい目標は簡単な目標の時と比べて、大きな達成感を味わえることを。

 自分の能力をはるかに超えた困難な目標ならば、不安を感じるし、何よりも目標達成できない可能性が高いです。

 逆にあまりにもやさしい目標であるならば、退屈し、できた時の達成感が得られません。

 一生懸命に努力すればできるかもしれない、やや困難で挑戦的な目標を設定することによって、やる気がより高まることになり、達成した時の喜びや満足感が最大となりやすいのです。

【行動につながらない目標】
× 簡単すぎて、退屈な目標
× 難しすぎて、達成不可能に思える目標


【行動につながる目標】

〇 成功確率が50%くらいに思える目標

※本稿は、『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。