玄侑宗久など
芥川賞作家を3人輩出

芥川賞作家の玄侑宗久芥川賞作家の玄侑宗久 Photo:SANKEI

 難読校だ。「あさか」高校という。福島県のほぼ中央、県内一の商業都市・郡山市にある県立高校だ。福島県として初めての公立中学である旧制福島中学校を前身としている。略称は「安高」だ。

 旧制、新制にまたがり、3人の芥川賞受賞作家を出しているのが自慢だ。中山義秀、東野辺(とうのべ)薫、玄侑宗久(げんゆう・そうきゅう)だ。

 玄侑は1956年生まれで、福島県三春町の臨済宗妙心寺派の寺の住職だ。安積高校を経て慶応大文学部中国文学科で現代演劇を専攻、小説を書き始めた。2001年に「中陰の花」で第125回芥川賞を受賞した。福島県が大きな被害を受けた東日本大震災や原発問題について鋭い発言をしており、政府の復興構想会議の委員も務めた。

 中山は1900年生まれで、旧制福島県立安積中学―早稲田大文学部英文科卒。38年に「厚物咲」で第7回芥川賞を受賞した。69年に死去した。

 東野辺は1902年生まれで安積中学―早稲田大高等師範部国漢文科卒。43年に「和紙」で第18回芥川賞を受賞した。62年に死去した。

 芥川賞受賞作家を3人も輩出した高校(前身の旧制中学時代を含む)は他に、東京都立日比谷高校(柏原兵三、古井由吉、庄司薫)、東京・千代田区立九段中等教育学校=前都立九段高校(清水基吉=中退、安岡章太郎、近藤啓太郎)、東京・私立麻布高校(吉行淳之介、北杜夫、藤野千夜)しかない。

 文芸の血は、福島中学創設のころから流れているようだ。明治時代の文芸評論家・小説家・思想家で、美文体を得意とした高山樗牛が1期生だ。中退したが、校内に碑がある。

 夏目漱石の門人で、明治から昭和にかけての小説家・俳人である久米正雄も旧制卒だ。「微苦笑」という語を造語したことで知られる。

 劇作家・翻訳家の鈴木善太郎も安積中で学んでいる。児童文学では菅生(すごう)浩がいる。

 安積高校時代に戯曲にのめり込んだという小説家の古川日出男は、三島由紀夫賞を受賞している。直木賞候補にもなっている。

 漫画家の深谷陽は、元特殊メイクアーティストでもあった。情緒あふれるウエットなタッチの作品が多い。

 前川つかさも漫画家で、政界をテーマとした政治漫画が得意だ。佐藤六朗も漫画家で、動物を擬人化した漫画が多い。

 新進気鋭の漫画家も出ている。ゆずチリは、現役東大生だった13年に小学館新人コミック大賞に入選した。主に少年向け・青年向け漫画雑誌に、学園漫画や青春漫画を多く描いている。