アベノミクスの限界を示したか?
株価調整で台頭する悲観的な見方
5月23日、日経平均株価が1000円を超える急落となって以降、市場関係者などの間から「株価下落はアベノミクスの限界を示した」との指摘が出ている。株価が調整局面入りしたことで、先行きに対する悲観的な見方が台頭していることを考えると、そうした声は理解できないではない。
しかし冷静に考えると、まだ、アベノミクスの最も重要な成長戦略、つまりいかにしてわが国の企業を強くし、経済を立て直すかという点が明らかにされていない。
今まで、円安傾向が進み株価が急速に上昇していたことで、多くの人が何となく、先行きについて楽観的な見方になっていたのだが、それはアベノミクスの「前座」とも言える金融政策による成果に過ぎない。
この次は安倍首相自身が実際に汗をかいて、各省庁や既得権益層の壁を破る番なのである。安倍首相の政策実行能力を不安視する見方は根強く、過大な期待を持つことは危険であることは確かだが、海外への積極的なセールス姿勢などを見ていると、それなりの期待を持てるかもしれない。少なくとも、金融市場の関係者や一般庶民も、まだ期待を捨てたわけではないだろう。
重要なポイントは、安倍首相が明確な成長戦略を打ち出せるか否かだ。それができなければ、期待が失望に変わり、アベノミクスで加速した相場は終焉することになる。もちろん楽観はできないが、その判断は今ではなく、もう少し先になるはずだ。
わが国の株式市場は、昨年11月13日を底にして上昇基調に変わった。11月14日に、当時の野田首相が衆院を解散することを宣言したことをきっかけに、全く期待の持てない民主党政権に代わって、やや期待可能な自民党政権ができることが現実味を帯びたからだ。