タリバン指導者・オマル師の
屋敷を急襲せよ

 ボールドイーグルは、急襲部隊に問題が発生した場合に備えて、いつでも支援できるようにしておく中隊規模の部隊だ。わたしたちの心に浮かんだ疑問は、“なぜブラボーが?”だった。

 その疑問を口にするにはホイットマー大尉は控えめすぎたが、わたしには答えが分かっていた。

 部下を優れた海兵隊員に見せるのではなく、本当に優れた隊員にするための訓練をしているホイットマー大尉は、大隊の中隊長たちの中では型破りで、のけ者のような存在だ。大尉はわれわれを厳しく鍛え、権威にも異を唱えて、こびへつらうふりすらしない。なのに、いざ実戦任務がはじめて命じられたとなると、大隊が頼るのはホイットマー大尉なのだ。

 計画はこうだ。金曜の夕方、日が暮れるころ、主に陸軍レンジャー部隊と特殊部隊で編成されたタスクフォース・ソードが〈キティホーク〉(編集部注/アメリカ海軍の航空母艦)を発つ。ソードはパキスタンへ飛び、ダルバンディン近郊の小さな飛行場、コードネーム“ホンダ”を確保して、燃料補給・再軍備地点として使えるようにする。

 ダルバンディンから先は、部隊の一部がアフガニスタン南部の砂漠にある小空港、コードネーム“ライノ”にパラシュートで降下し、残る部隊はカンダハール郊外に住むタリバン指導者ムッラー・オマルの屋敷を急襲する。

 われわれは、この任務のなかで何かがうまくいかなかった場合の予備部隊だ。任務は複雑で、うまくいかない可能性はいくらでもあるように思えた。

 翌朝、B(ブラボー)中隊が〈ダビューク〉から移動してきた。下士官たちが隊員に仮の寝台室を割り当て、この任務のための弾薬と装備を配っている間、ホイットマー大尉とパトリックとわたしは引き続き計画に取り組んでいた(編集部注/ダビュークは、筆者たちがサンディエゴから乗艦していた揚陸艦)。

「何ができないか」ではなく
「何ができるか」を伝えろ

 海兵遠征隊(MEU)の任務は必ず3段階の計画プロセスを経る。

 まず、どこか上のほうの司令部からMEUに、ある任務の実行を“準備せよ”という準備命令が下る。東ティモール国民に食糧を配給する任務のこともあれば、イスラマバードの大使館から民間人を退避させる任務や、アフガニスタン侵攻任務の即動部隊として配置につく任務のこともある。