
イスラム過激派テロ組織アルカイダによる、同時多発テロ事件が2001年9月11日に発生。アメリカ海兵隊の若き少尉だった筆者は、アルカイダ壊滅に向け、アフガニスタンへと送られた。そこで出会ったのが、ジェイムズ・マティス将軍だ。その後、第1期トランプ政権で国防長官にまでのぼりつめたマッドドッグ・マティス。彼が戦場で見せた「真のリーダーシップ」とは?※本稿は、ナサニエル・フィック著、岡本麻左子訳『死線をゆく アフガニスタン、イラクで部下を守り抜いた米海兵隊のリーダーシップ』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。
「狂犬」マティス将軍が
戦場の海兵隊員らに贈った言葉
砂地を横切り、砂丘に紛れて立つオリーブドラブ色のテントへ向かっていると、こちらに近づいてくる人物の姿があった。見慣れない階級章が襟で太陽に輝いている。棒の形ではなく、オークの葉でもない(訳者注/棒状の階級章は大尉以下、オークの葉の階級章は中佐と少佐を表す)。
ひとつ星の階級章だ。第58任務部隊の指揮を執るマティス将軍(編集部注/ジェイムズ・マティス准将。のち第1次トランプ政権の国防長官。マッドドッグ〔狂犬〕の異名をとる)が到着していた。
「おはようございます、准将」われわれふたり(編集部注/もう1人は戦地で再会した旧友のジム・ビール)は敬礼できない分の不足を補おうと、活気みなぎる挨拶をした。