準備命令を受けると、MEU幹部は一気に熱を帯びて忙しく動きだし、MEUでどのように任務を遂行するかという行動方針を策定する。

 海兵隊では、個々の部下が指揮官に選択肢を提言しなくてはならない――何ができないかではなく、何ができるかを伝えろ――というのが、戦闘理念の中心をなす教義だ。状況に応じてふたつか3つ、あるいは4つの行動方針を作成し、それをもとにおおまかな基本作戦計画を立てる。

 ソードの任務では、ヘリコプターのパイロットたちが距離と使用燃料を計算し、山脈を抜ける様々な飛行ルートを計画した。歩兵将校たちは地図を丹念に調べてライノとホンダの施設配置を覚え、それぞれの筋書きに必要な人員数を割り出した。

あらゆる仮説を検討した結果
行動指針は3つの選択肢に

 あらゆる仮説が集まり、行動指針は最終的に3つの選択肢に絞られた。ボールドイーグルを必要に備えて地上のホンダに配置するか、要請があるまで海の上空で機上待機させるか、〈ペリリュー〉で待機させて要請後数分で発てるよう備えるかだ。

 MEU指揮官がこの選択肢を検討し、この即動部隊を〈ペリリュー〉で待機させると決めた。反応時間はほかとほぼ変わらず、リスクを大幅に減らせるからだ。行動方針が決まり、MEUは任務達成に向けて作戦構想の詳細を具体化していった。

 またしても目のまわる忙しさだ。任務の担当ごとに、おびただしい数の小集団がコーヒーを燃料にした議論で計画を練っていく。

 パイロットたちは飛行ルートを計画し、輸送ヘリコプターのスーパースタリオンと武装ヘリコプターのコブラの組み合わせでいこうと決めた。歩兵の方は、1機が墜落したとしても機関銃手や将校が全滅しないように、小隊を複数のヘリコプターに分乗させる割り振りを完成させた。

 通信を担当するグループは専用の衛星無線チャンネルを要請し、周波を変えて傍受を防ぐ暗号化コードを作成した。兵站部隊は艦の弾火薬庫から弾薬を運んできた。

 医療班は艦内に手術室の準備をし、隊員たちに携行させる血液を解凍した。そして、こまごまとした計画のすべてが作戦構想の概要にまとめられてMEU指揮官に提出された。