
2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが発生。復讐心に燃えるブッシュ大統領は、アフガニスタンに潜伏するイスラム過激派組織アルカイダを壊滅すべく、アメリカ軍を派遣した。若き日の筆者は、海兵遠征隊の少尉として中東を目指すことになった。ある日突然、旗艦〈ペリリュー〉に呼び出された筆者たちB(ブラボー)中隊に大隊の副隊長が告げた驚くべき作戦内容とは?※本稿は、ナサニエル・フィック著、岡本麻左子訳『死線をゆく アフガニスタン、イラクで部下を守り抜いた米海兵隊のリーダーシップ』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。
ブラボー中隊に命じられた
アフガニスタン南部への侵攻
「ようこそ、B(ブラボー)中隊」副隊長がこちらにうなずいて言った。
「今から言うことは、この部屋の中だけの話だ。計画を練るのも理屈をこねるのも文句を垂れるのも、この四方の壁の中だけだ――下甲板でも士官室でもジムでも口にするな。分かったか」
わたしたちがうなずくと、副隊長は話を続けた。「知ってのとおり、米国はこの9日間、アフガニスタンに空爆をおこなっている」副隊長の説明によると、地上では小規模のCIA部隊と陸軍特殊部隊群が主に北部に展開しているという。アフガン南部にはまだ地上部隊が入っていない。副隊長は効果を狙ってひと呼吸おいた。
「今から、それが変わる。10月19日、金曜の夕刻、任務部隊(タスクフォース)ソードがアフガニスタン南部への侵攻任務を遂行し、飛行場を掌握して、高価値目標の敵幹部の捕捉を試みる」
一瞬の沈黙。「その任務のボールドイーグルを、われわれの大隊から出すことになった」沈黙。そして、ホイットマー大尉、パトリック、わたし(編集部注/ホイットマーは中隊長、パトリックは小銃小隊の小隊長、筆者は中隊の重火力を担う火器小隊の小隊長)に注目が集まる。「B(ブラボー)中隊、それが諸君だ」わたしたち3人は顔を見合わせた。