マティスの一般原則の3「兵をまとめる下士官の攻めの姿勢が勝利の鍵を握る」

 リーコンでは何の問題もない。班長はほとんどが下士官である軍曹で、大隊の根幹を支えるのはその班長たちだ。鍛え抜かれ、やる気に溢れ、経験も積んでいる。わたしとしては、攻撃性を煽るよりも抑えるほうが大変そうだ。

マティスの一般原則の4「失敗は許されるが、規律違反は一切容認されない」

 灯火、音、射撃の規律は常に守らなくてはならない。勝利は細部に宿ることをマティス将軍は知っている。些細なことをおろそかにすれば、やがて重大なこともおろそかになる。そういう規律違反はできるかぎり些細なうちに潰しておこうというわけだ。わたしはブリッジポートでの偵察の静寂を思い返し、リーコンの規律に自信を持った(編集部注/カリフォルニア州ブリッジポート近郊のハイシエラには、海兵隊の山岳戦闘訓練センターがある。そこで筆者はリーコンの訓練に同行し、その静寂で俊敏な動きに舌を巻いた)。

戦闘開始直後の5日間を
生き延びる訓練をすること

マティスの一般原則の5「自分の対NBC装備を信用すること」

 NBCは核兵器(nuclear)、生物兵器(biological)、化学兵器(chemical)の略だ。将軍はひと呼吸おいて部屋を見まわした。「化学兵器の攻撃を受けることは覚悟しておけ」これには正直、ぞっとした。海兵隊員は少なくとも年に1日、ガス室で防毒マスクを安心して使えるよう訓練する。だが、それはただの催涙ガスだ。

 わたしはサダム・フセインがハラブジャのクルド人の村を化学兵器で攻撃した時の写真を見たことがあった(訳者注/1988年にイラク北東部のクルド人自治区が化学兵器で攻撃された事件。死者5000人、負傷者1万人ともいわれる)。サリンやVXガスで窒息死した緑色の死体の山。ガニー(編集部注/一等軍曹のこと)・ウィンが要点を口にした。「もし化学兵器にやられたら命はないな」