「ごきげんよう、諸君。金曜のこんな遅くに集まってくれて感謝する。南カリフォルニアの女たちが諸君を待っているだろうから、時間を無駄にするのはやめておこう」

 マティス将軍は戦闘の計画や戦術の話はしなかった――そういう話を行き渡らせるのは指揮系統のもっと下がやることだ。将軍は7つの一般原則の話だけをした。その7つを熟考し、自分の血肉とし、体現するよう命じた。戦闘における師団の成功はそれにかかっている、と将軍は言う。

マティスの一般原則の1「8日前通知で混乱なく展開できること」

 わたしの小隊はおそらく8日で出発できるが、混乱はあるだろう。

 日常の保守点検と修理をすべて終えなくてはならない。装備を整理して荷造りする必要もある。砂漠用軍服の支給。搭載目録の作成。炭疽(たんそ)病や天然痘の予防接種。それに私生活のこともある。家の荷物をまとめ、車を預け、請求書の支払いをして、家族や友達に会う。何をどうしたって戦争に行くのは大変だ。

兵をまとめる下士官の
攻めの姿勢が勝利の鍵を握る

マティスの一般原則の2「どんな規模であれ諸兵連合部隊として戦うこと」

 諸兵連合部隊というのも海兵隊のモットーだ。

 これは敵を板挟みの状況に追いこもうという考え方で、敵はある武器から隠れようとすると別の武器に身をさらすことになる。諸兵連合部隊は小銃手ひとりと擲弾(てきだん)手ひとりでも編成できるし、師団とその航空団でも編成できる。これはわれわれが得意とするところだ。航空隊や砲兵隊との連携経験の豊富さでいえば、リーコン(編集部注/海兵隊の特殊作戦部隊)の右に出る者はいない。いるとすれば、元火器小隊長ぐらいだろう(編集部注/火器小隊は、機関銃班・強襲班・迫撃砲班からなっており、これらを連携させて指揮する火器小隊長には、高い指揮能力が求められる)。