
店の実態も何も知らずに「名代 富士そば」と聞いたら、どういうイメージを持つだろうか?「名代」と聞くと、格式高いイメージを持つ人もいるのではないか。店の名前は消費者に絶大な影響を与えるというが、筆者は学生時代に店名による「奇跡」を経験したことがある。今回は、店名と経営の深い関係を伝えたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)
店の名前と実態が合ってない?そば店の謎
月に一度、東京大田区の蒲田にある顧問弁護士の事務所を訪れる。打ち合わせを終え、時間に余裕があるときは決まってそば屋へ足を運ぶ。選択肢は京急蒲田駅近くの「名代 富士そば」、JR蒲田駅方面の「ゆで太郎」、都心に戻ってからの「小諸そば」の3つだ。
気分でのれんをくぐる店を決めているが、この日は「名代 富士そば」に行くことにした。
「名代 富士そば」という店名について、多くの人が「名代」という言葉の読み方や意味を正確に理解していない。
「名代」の読み方については後述するが、意味は有名である、評判が良いといったところだ。どこか格式高い老舗のそば屋を思い浮かべる人もいるのだろうか。
もちろん、実態を知る者にとっては、手頃な価格で提供される大規模なフランチャイズチェーンであることは自明だ。「名代」という名と実際の店の雰囲気が一致していないように思える。
むしろ「ゆで太郎」や「小諸そば」の方が、店名から店舗全体の設計思想が一貫して伝わってくる印象を受ける。「名代 富士そば」と名乗るからには、もう少し高級感のある店構えであっても良いのではないか。
ただ個人的に最も食欲をそそられないそば屋の名前は「そば処 めとろ庵」だ。
店名が東京メトロが運営しているであろうことは理解できる。しかし、メトロ(地下鉄)という存在に美食のイメージは結びつきにくい。一体どのような意図で選ばれたのか、謎でしかない。