出店の巧妙さは他にもある。駅前一等地ではなく、あえて住宅街や郊外の小商圏を狙うことで家賃を抑え、競合の少ない地域で存在感を示しているのだ。フランチャイズ加盟金は150万円、保証金50万円、研修費40万円、開業サポート費50万円、専用機材約100万円と、居抜き物件を使えば総額700~800万円ほどで開業可能だ。一般的なフランチャイズ加盟金は100~300万円であり、飲食店を開業するには1000万円が目安となることを鑑みれば、開業へのハードルは低い。
また、月額ロイヤルティーは10万円+売上の4%。一般的な月額ロイヤルティーは売上の3~10%なので、良心的であると言えよう。損益構造は、食材原価率40~45%、人件費25%、家賃5~10%程度と、原価率を高くして品質を維持しても利益は確保できる計算だ。
開業資金がそれほど多くなく、職人が不要で、居抜き物件でも問題ない。オペレーションが簡易で人件費負担が小さいことも、脱サラ組や地方の事業者にとって参入の後押しになり、フランチャイズ展開がスピーディに拡大しているというわけだ。
早い・安い「うな丼」640円!
「名代 宇奈とと」インバウンドにも人気
「鰻の成瀬」の他には、「名代 宇奈とと」もまた、新興チェーンの代表格として根強い人気を誇る。国内に約80店舗(テイクアウト・デリバリー専門店含む)、海外に9店舗を展開する宇奈ととは、「早い・安い・旨い」をコンセプトに掲げ、「うな丼」640円を看板メニューに、豊富なサイドメニューを取りそろえる。
宇奈ととでは中国産の鰻を大量に仕入れてコストを下げ、オリジナルの網焼き器によって店舗の調理を簡易化。客はファストフードのように気軽に訪れるので、回転率も高い。都市部のランチ需要や、外国人観光客の「手軽に日本の味を楽しみたい」といったニーズを的確に捉えている。ハッピーアワーを行ってアルコール需要も取り込み、売上向上に寄与している。
「鰻の成瀬」と「名代 宇奈とと」に共通するのは、職人不要のセントラルキッチン方式と、フランチャイズ展開による急拡大、何より消費者目線の価格設定である。このビジネスモデルは、鰻を「高嶺の花」から「日常の贅沢」に変えつつある。