定番となった牛丼チェーンの鰻
原価率は決して低くない!

 牛丼チェーンも、鰻市場において無視できない存在だ。基本的には夏季限定で、吉野家では「鰻重」や「鰻皿」、松屋では「うな丼」や「うなたま丼」、すき家では「うな丼」や「うな牛」など、鰻メニューを展開している。価格は1000円前後とお手頃で、ワンオペでも回せるよう調理工程も簡略化されている。

 牛丼チェーンの鰻に関するデータは公開されていない。ただ、一食あたりで使用される鰻の重量は最低でも約100グラムあり、中国産の鰻でも仕入れ価格は300~400円ほどと推測できるので、原価率は決して低くないことがうかがえる。オンラインで冷凍うなぎの販売も行っているため、店頭販売と合わせて大量に仕入れることで、原価を抑えているとみられる。

 高級感はないが、「1000円前後で鰻を食べられるだけで嬉しい」と考える消費者にとっては、夏限定という「今だけ感」も相まって、一定のニーズを確保しているのは納得できる。

歴史人物も通った鰻の老舗は
営業利益率10%確保で長生き

 一方、鰻の本質的な魅力を体現する名店を忘れてはならない。歴史上の人物も通った100年を超える老舗が今も、のれんを掲げている。

 都内だけでも、鰻や鯉で有名な「川千家」(1778年創業、柴又)、勝海舟とジョン万次郎も食した「やっこ」(1789~1800年創業、浅草)、ミシュランガイド一つ星の「野田岩」(1789年~1801年創業、麻布)、九州産の鰻にこだわる「はし本」(1835年創業、江戸川橋)、北大路魯山人も愛した「竹葉亭」(1866年創業、銀座)、静岡県のブランド養殖もの「共水うなぎ」も味わえる「うなぎ秋本」(1909年創業、麹町)が挙げられる。

 老舗や名店といわれる鰻専門店は、客単価が5000~8000円ほど。新興チェーン店よりもずっと高価格なので、国産鰻を使用しても食材原価比率は35%~40%程度に抑えられている。高い技術を必要とするため人件費は30%程度で、あまり圧縮できない。提供時間がかかるので回転率も優れているとは言えないが、事前に注文を取れば、品数は多くないだけに時間短縮は可能だ。営業利益率は10%程度を確保する店が多く、そのため長く地道に営業を続けられる。