小さな会社や個人商店、個人事業主の方が、「今すぐ売上や利益をあげたい!」と思ったときには、どうしたらいいのか? 『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』(以上、ダイヤモンド社刊)の著者で、販促コンサルタントの岡本達彦氏は、だれでも手軽に低予算で実施でき、販促効果の高い販促手法を同書の中で紹介している。本連載では、顧客開拓や売上・利益の減少に悩む経営者や個人事業主の方に向けて、『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』で紹介している考え方をベースに、著者の岡本氏が効果の見込める販促策について、書き下ろしでわかりやすく解説していく。

「A4」1枚アンケートがこれからも役立つ理由。 変化の時代に変わらず大事な「聞く力」Photo: Adobe Stock

テクノロジーが進化しても、「選ばれる理由」は変わらない

 ここ数年で、広告や販促の世界は劇的に変化しました。

 SNS広告の高速展開、動画コンテンツの爆発的な普及、さらに近年では、ChatGPTなどの生成AIによるコピー制作やデータ解析までが当たり前になり、今や「プロでなくても、誰もが広告をつくれる時代」が到来しています。

 手法もツールも、目まぐるしいスピードで進化を遂げています。

 以前なら制作に数日かかったものが、今では数分で仕上がり、配信もボタン一つ。

「伝える手段」は、これまで以上に多様で、かつスピーディになりました。

 けれど、それでも変わらないものがある。
 いや、変わってはならない「原点」があるのです。

 それは、「なぜその商品が選ばれたのか?」という問いに、まっすぐ向き合うこと

どれだけ手法が変わっても、「聞く力」は変わらない

 多くの企業は、テクニックや戦略に目を奪われがちです。

 ・「どう発信すれば拡散されるか?」
 ・「どんな言い回しが売れるのか?」
 ・「どの媒体がコスパがいいのか?」

 確かに、どれも重要な要素です。

 しかし、それはすべて伝えるという行為に軸足を置いた発想です。

 一方で、広告や販促の本質は、ただ一方的に「伝える」ことではありません。

 相手に伝わるためには、まずは「相手を知る」=「聞くこと」が欠かせないのです。

「聞く力」があるからこそ、「伝える力」が育つ

 たとえば、あなたが何かを伝えようとするとき、相手の悩みや価値観、行動の背景を知らないまま話したらどうなるでしょうか?

 どんなにキャッチーな言葉も、相手に響くことはありません。むしろ、「なんかズレてるな」と思われて終わってしまうでしょう。

 でも逆に、相手が何に悩み、どんなきっかけで興味を持ち、何を求めているのかを知っていれば、自然と伝えるべきこと、伝え方は明確になります。

 つまり、「聞くこと」ができるからこそ、「伝えること」が生きてくるのです。

 そのスタート地点が、「お客様の声」なのです。

ツールが進化しても、考え方の本質は変わらない

 世の中には、毎年のように新しい販促ツールやマーケティング理論が登場します。便利な自動化ツール、ハイテクなデータ解析、バズを生むSNS活用法……。

 たしかに、これらは「スピード」「効率」「拡散力」といった武器を与えてくれます。

 しかし、それらをどう使いこなすかは、あくまでも人間の判断力にかかっています。

 結局、どんなに進化したツールでも、最終的に必要なのはこうした問いです。

 ・「誰に伝えるのか?」
 ・「何を伝えるべきか?」
 ・「なぜ今、それを伝える必要があるのか?」

 これらの答えは、ツールではなくお客様の声の中にこそあるのです。

AIの時代に、価値が増すのは「耳を傾ける力」

 AIや自動化ツールは、確かに優れた文章を出力してくれます。

 けれど、そのアウトプットの質を決めるのは、与える情報=「インプットの質」です。

 つまり、「良い質問」と「良い素材」がなければ、AIも力を発揮できません。

 ここで言う良い素材とは、まさに「お客様の声」。

 ・「なぜ買ったのか」
 ・「何に迷っていたのか」
 ・「何を見て決めたのか」

 こうした声を定期的に集めることで、AI時代においても他社と差がつく広告が生まれます。

「耳を傾けられる人」こそが、これからの販促の主役になるのです。

小さな声に耳を澄ませる企業が、選ばれ続ける

 これからの時代は、予測困難で変化が激しい時代になります。昨日うまくいったことが、今日には通用しない。そんなことが当たり前になる時代です。

 だからこそ、頼るべきは現場の声です。統計データや市場分析も大事ですが、もっと信頼できるのは、目の前のお客様の生の声です。

 ・「こんな一言に救われた」
 ・「実は不安だったけど、これを見て決めた」
 ・「思ってたよりも●●だった」

 そうした日常の中にこそ、次にやるべき販促のヒントが隠されています。

20回の連載を通して伝えたかったこと

 本連載「お客様の声から始める広告づくり」では、全20回を通して一貫して伝えてきたことがあります。

 それは…

「お客様の声には、すべてのヒントがある」

 商品開発、販促企画、広告づくり、ホームページの改善、社員教育、接客対応、どれをとっても、聞くことから始めれば、間違った方向には進みにくくなります。

「ズレた施策」を打たなくて済むようになるのです。

 そして何より、お客様との信頼関係を深める最短ルートは、「声を拾うこと」であり、それをもとに改善を重ねる姿勢が、「この会社は信頼できる」と思ってもらえる要素になります。

迷ったときは、「お客様の声」に立ち返ろう

 今後、どれだけ広告の形が変わっても、テクノロジーが進化しても、変わらないのは「人が人にモノを売る」という本質です。

 だからこそ、聞く力は、これからも普遍的な武器になります。それは、変わらないものではなく、変化に対応するための力なのです。

 この連載が、あなたにとって「迷ったときに戻る原点」になれば幸いです。

 そして、これからも現場で、お客様の声を聞き続けてください。きっと、そこにこそ未来を切り拓くヒントが隠れています。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
株式会社アカウント・プラニング代表取締役
販促コンサルタント
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、難しいマーケティングや心理学を勉強しなくてもアンケートから売れる広告を作る広告作成手法を日本で初めて体系化する。業界を問わず、お金をかけないで簡単にでき、即効性もあることから、全国の公的機関、経済団体、フランチャイズ本部からセミナー依頼が急増し、社内に仕組みとして取り入れたいという会社からのコンサルティング依頼は後を絶たない。
著書にアマゾン上陸15年「売れたビジネス書50冊」にランクインし、販促書籍のベストセラーとなった『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法 チラシ・DM・ホームページがスゴ腕営業マンに変わる! 』、『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル―お客様の声から売れる広告・儲かる仕組みが確実に作れる!』、『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』(ダイヤモンド社)などがある。