このような一連のコミュニケーションを、外資系企業では「パフォーマンス・インプルーブメント・プラン(PIP)」といいます。もともとは社員の業績改善のためのプログラムなのですが、日本企業に普及していくうちにいつの間にか、合法的にリスクヘッジをして退職に追い込むという、リストラの道具として理解・運用されるようになりました。しかし、その本質はあくまでも「改善」です。

 私の目から見ると、日本企業は、低業績者の業務改善についての努力が極めて足りないように映ります。

「日本では海外のように社員を解雇できないから」と言う人がいますが、解雇規制があることと、低業績者に手を尽くさないというのは別の次元の話です。

 日本ではなぜか、解雇できないから低業績者に正面から向きあわないという図式になっています。

自分は働いているつもりでも
周囲にはそう見えていないかも?

 低業績者になる可能性は、実は誰もがもっています。しかし、好きこのんでなるわけではありません。

 ある仕事でコミュニケーションがうまくいかなかった、取引先とちょっとしたことがきっかけでトラブルになった、引き継ぎが充分でないまま前線に立たされた。そういったいくつかの要因が運悪く重なったことで、がんばりが空回りして、うまくいかなくなってしまうのです。

 また、低業績者はある日突然「爆誕」するものでもありません。信頼関係がある環境のもとで日ごろからフィードバックできていれば、現状と期待の間のギャップが共有でき、改善のきっかけを促すことができたはずです。

「うちの部署はみんな優しいから、今まで言わなかった」というのは、優しさでも何でもないし、ましてやいい環境でもない。本来の役割から誰もが逃げた挙げ句の、「ユルく残酷な」職場です。

 周囲の期待に反して、役割や行動が伴っていない中高年の男性社員を、一部で「働かないおじさん」とか「妖精さん」などと呼ぶ空気があります。

 ベテランで社歴も長く、過去になにか業績を上げたことがあるらしい。けれど、当時のことを直接知る人はいない。年上だから「働いてくださいよ」とも言えず、みんながなんとなく遠巻きに「あの人、一体何をしに来ているんだろう」と見ている。こんな状態ではないでしょうか。

 彼らはおそらく50代中盤から後半の、私とほぼ同じ世代だと思います。私たちは「雇用と報酬」の関係についてほぼ同じ概念で理解していたと思います。