上司に怒られる部下写真はイメージです Photo:PIXTA

「叱ったらパワハラと言われるかもしれない」「指導したつもりがクレームになるかもしれない」そんな恐怖から、部下へのフィードバックを避ける上司が急増している。その結果、職場からは“成長の機会”が奪われていく。日本企業に根づいたハラスメント過敏症の行き着く先とは?※本稿は、安田雅彦『世界標準のフィードバック 部下の「本気」を引き出す外資流マネジメントの教科書』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。

なぜ部下たちは組織に失望し
離職していくのか?

 私が人事コンサルタントとしてさまざまな企業を支援する中で、マネジャーたちから必ずと言っていいほど相談される悩みが「せっかく育て上げた部下が突然辞めてしまう」というものです。

 では、なぜ部下たちは組織に失望し、離職していくのでしょうか?

 私が今まで多くの会社でエンゲージメントサーベイ(従業員満足度調査)をおこなってきてわかった「社員の不満が多い3項目」とは、

(1)給与の不満
(2)経営ビジョンが見えず不信感
(3)成長実感がなく、キャリアが見えない

 です。

(1)の多くは人事制度の問題であり、(2)は経営側のコミュニケーションに難がある。

 そう考えるとマネジャー1人だけで、これらをすぐに解消するのは難しいでしょう。

 とすれば、マネジャーが部下のためにすべき最優先の仕事のひとつは、(3)の、「部下に成長実感をもたらすこと」となります。

 そのために、フィードバックが必要なのです。

 フィードバックの基本概念とは、「『期待されているあなた』と『実際のあなた』のギャップを示し、このギャップを埋めていくことを成長の機会として捉えさせること」です。