つまり、「若いうちは死ぬほど働け。給料は最初のうちは安いけれど、ある年月まで到達すると、労働と給与の額とが交差して、年功によって給与は上がっていく。だから四の五の言わずに働くんだ」と言われてきたわけです。
「働かないおじさん」でも
キャリア再生の可能性はある
ゆえに、働かないおじさんの言い分としては「俺は若い頃は馬車馬のように働いてきたし、若いときに見てきた上司と同じことをやっているだけだ」というところでしょう。
今はそんな時代はとっくに過ぎているのですが、人は心地よい領域からは出たくないもの。現実からは目を逸らして、「自分は悪くない」と思っている人が多いのではないでしょうか。
このような方たちのほとんどは、自分のキャリアを客観的に見つめたことがありません。
仕事を通じて今まで培ってきたのはどんなことで、職業人としてどうありたいと思ってきたか、過去の実績や資産に目を向けていない。気付いてすらいないでしょう。
おそらく、一度も転職活動をしたり、職務経歴書を書いたりしたこともないはずです。そして「この会社で30年、同じ仕事しかやっていないし、今さら転職なんかできるわけがないだろう」と、開き直っている。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進行による事業構造の変化も相まってこのような人たちを対象にしたリスキリング(学び直し)が注目されています。

安田雅彦、SBクリエイティブ
このリスキリングを効果的なものにするためには過去の自分の成功体験を思い出したり、職務経歴書を書いてみたりして、仕事へのエンゲージメント(仕事に対して自ら貢献しようという意欲をもち、主体的に取り組んでいる状態)を明確に認識することが重要で、それをしない限り、いくら費用をかけても、効果は薄いでしょう。
長期雇用の世界に生きている人は、今この仕事が自分と組織・社会にとってどんな価値をもち、将来にどうつながっているのか、意識する機会に恵まれていません。
しかし、今の自分を常に俯瞰的な視点で見て、将来やりたいことや進みたい方向を認識すれば、パズルのピースを埋めるように足りない部分を補って仕事をしていくことができます。
自分のキャリアを棚卸しして、強みや弱み、隠しもっていて気付かなかった「武器」をもう一度見直してほしい。そうすれば、その武器が再び使えるようになるかもしれない。
まだ希望はあります。