勉強、仕事、筋トレ…やる気はあるのに先延ばししてしまう。多くの人が抱えるこの悩みに、心理学の視点から答えるのが、新刊『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』だ。著者は、モチベーションの研究を専門とする筑波大学人間系教授・外山美樹氏。本稿では、本書より一部を抜粋し、「モチベーション維持に役立つ心理的メソッド」を紹介する。

挑戦に最適な日とは?
たいていの人は、目標達成に必要な時間と労力を費やす自制心がなく、代わりに目標に向けた行動を先延ばしにしてしまう傾向があります。
ダイエットや運動、禁煙、勉強を繰り返し先延ばしにしては、反省をする日々を送ってしまいます。
そんな毎日の中で「時間的ランドマーク」は、時間の経過を区切る、すなわち、過去、現在、未来の自分を隔てる壁として機能します。
みなさんも、年が明けると、まっさらな状態になった感覚を経験したことがあるのではないでしょうか?
それは新しい自分が誕生したように感じる瞬間です。
12月30日から31日に変わる時にはそのような気持ちにならないのに、12月31日から1月1日に変わる時には、自分が新しくなったように感じる。
ある1日から別の1日への移行という点では同じなのに、不思議ですよね。
同じく、誕生日を迎える時にも、新たな気持ちを抱くことが多いものです。
時間的ランドマークによって、新たなスタートを切る感覚は、すなわち、過去の自分と現在の自分(あるいは未来の自分)との間に心理的な距離が生じることを意味します。
そして、そのことは、目標の開始を促進するいくつかの心理的プロセスを刺激します。
新しい自分に生まれ変わる日
時間的ランドマークによって、過去の不甲斐ない自分を切り離し、ダメな自分を過去に追いやります。いつもだらだらと過ごしているダメな自分とは、さよならです。
過去の自分に別れを告げ、新しい自分に生まれ変わることで効力感が高まり、目標に向かって行動を開始するというモチベーションが生まれるのです。
確かに、過去の自分は、大事なことを先延ばしにしてしまうダメな人間でした。しかし、それはもう、過去の話です。
時間的ランドマークを区切りとして新しいスタートを切ることによって、そうではない自分、すなわち、「自制心の強い自分」、「計画を実行し目標を達成する自分」を認識し、その認識に従って行動しようとします。
時間的ランドマークを契機として心理的に劣った過去の自分から切り離されることで、過去よりもよい行動をとる意欲が湧きます。
挑戦への意思を強めたり、目標を達成するために一層の熱意をもって努力したりするようになる、というわけです。
時間的ランドマークを上手く活用する方法
私たちは、時間的ランドマークが新たな始まりを告げる時、目標に向けて動き出します。
時間的ランドマークが目標開始のきっかけになるのです。こうした時間的ランドマークを上手に活用しない手はありません。
平凡で単調な日々の中にも、時間的ランドマークはあちこちに点在します。
たとえば、週の始まりを迎える際に、この時間的ランドマークを強く意識することが、目標指向的な行動の「後押し」になる可能性があります。
時間的ランドマーク(たとえば、月、週の始まり)に合わせて、ジムの予約を入れたり、図書館で勉強する計画を立てたりすることも1つの心理的作戦です。
意志力に頼らずとも、自然と目標に向けて動き出すチャンスです。
※本稿は、『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。