のぶにとって次郎とは?
嵩は何が“違った”のか
やがて戦争が始まって、嵩はのぶに赤いハンドバッグを購入しプレゼントしようとするも、軍国主義に染まったのぶは、東京・銀座なんて贅沢だと嵩の生き方を否定する。
赤いバッグがのぶの手にわたるまで8年も流浪することになる。
そうこうしている間に、のぶは学校を卒業して若松次郎(中島歩)と結婚へ。婚約直後に事態を知った嵩はショックを受ける。
のぶは基本的に色恋に興味がなく、次郎との結婚も、恋というよりも、この時代の女性がそういうものだからという感じであった。ただ、次郎に包容力があるのと、教養が深く、のぶの知的好奇心をくすぐったのだろう。はちきんおのぶと呼ばれるほど活発な彼女は次郎の前ではおとなしめであった。
ただ、戦争に関して意見が真っ向から分かれ、喧嘩になった嵩とのぶのように、素直になんでも話せる関係ではない。やっぱり、嵩とのぶはいつでも本音で向き合い、飾らずにいられる関係だった。
ラブストーリーはすれ違いがおもしろい。その王道をいったのぶと嵩。戦後、ようやく、同じ会社に勤務することになったものの、すぐにのぶは東京に行ってしまう。
嵩の気持ちにまったく気づかず、自身も嵩を恋人と考えるなんて思ってもみないのぶだったが、震災で嵩の安否が気になったとき、ようやくなくてはならない人だと気づく。戦争中は軍国少女だったからそんなことは思いもしなかったのだろう。
嵩がコツコツと、のぶをモデルにした絵を描き続けてきたことが、「月刊くじら」の表紙で花開いた。
これまではおもしろ四コマの主人公だったのと比べると、表紙ののぶは実に美しい。
みんなにこれはのぶだと言われ、自分をこんなにキラキラとすてきに描いてくれたことに、のぶの心がときめいたのではないだろうか。「何のために生まれ何をして生きるのか」という問いの答えを探していたのぶが、ようやく自分のやりたいことに気づきはじめたとき、表紙の女性の上向きの表情は希望に満ちて、そんなのぶを祝福しているようにも見える。
嵩がずっと自分を見つめ続けてくれていたことは、この絵の完成度でさすがののぶもわかったのだろう。
のぶと嵩のハッピーエンド(まだ過程ではあるが)を台本の表紙の絵にするのも、『あんぱん』らしい。
とにかくおめでたい。これでやっと第1話の冒頭、仲良さそうな夫婦のふたりの物語になる。
台本の絵はこれからも変わるだろうか。
