
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第82回(2025年7月22日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
蘭子(河合優実)の言葉に説得力があるワケ
のぶ(今田美桜)に長らく渡せなかった嵩(北村匠海)の真っ赤なハンドバッグ。
「こんなにすてきなハンドバッグ見たことない」とメイコ(原菜乃華)は眼を輝かせる。これまで要らないと突き返されてばかりのバッグがついに褒められて、バッグも報われたことだろう。もうメイコにあげてしまえ。
蘭子(河合優実)は冷静に「え?何年前の話ですか」と尋ねる。
昭和12(1937)年(第31回)に登場し、現在昭和21年(1946年)9月で、筆者は9年来と思ったが、ドラマでは「8年くらい」とされていた。
「どういてもっと早う渡さんかったが」と羽多子(江口のりこ)。のぶは当時、「筋金入りの軍国少女」だったから、こういう贅沢なものを否定していたのだと嵩は話す。それで羽多子はナットク。このときの目つきに、戦争は終わったのだなと筆者は感じた。
戦争真っ盛りのときだったら、軍国少女を笑い話的に軽く受け流すことはできなかっただろう。自身もまた表向きは真顔で軍国主義に従っていただろうし、真面目に国に従っているのぶを笑うこともできなかっただろう。
ここのところ説明セリフ担当だった蘭子はここではツッコミ担当で、嵩になぜ、のぶに気持ちをぶつけないのかと真剣に問いかける。彼女は豪(細田佳央太)に気持ちをぶつけたから説得力がある。
「いまもお姉ちゃんのことを好きながですよね」とはっきり言われてしどろもどろの嵩。たっすいがである。