イーロン・マスクによるツイッター買収の全貌を描いた衝撃のノンフィクション『Breaking Twitter イーロン・マスク 史上最悪の企業買収』(ベン・メズリック著、井口耕二訳)が話題だ。本書には、マスクとツイッター社の壮絶な攻防と理想の衝突が、克明かつ臨場感たっぷりに描かれている。「生々しくて面白い」「想像以上にエグい」「一気に読んだ」などの絶賛の声も多い。本記事では、物議を醸したマスク自身のツイートを取り上げながら、ツイッター買収劇を概観してみたい。(構成/小川晶子)

ツイッター買収劇。はじまりのアンケート
いま、ツイッターは、この原理に従っていると思うか?
1 はい
2 いいえ
(p.47)
これは2022年3月25日にイーロン・マスクがツイッターに投稿したアンケートである。24時間後の回答期限には200万人以上の回答が集まり、その70%が「いいえ」を選んでいた。
イーロン・マスクによる「ツイッター買収劇」を、マスクのツイートで振り返ってみると、このアンケートからスタートしたと言えるだろう。
マスクにとって「言論の自由」は極めて重要だ。
テスラもスペースXも、「人類の文明を長続きさせる」ために情熱を傾けてやっている。
人類の存続がかかったミッションを成し遂げるには、言論の自由が絶対に必要だと考えていた。
それなのに、ツイッターは主流と異なる意見を抑圧し、アカウント凍結やシャドウバン、場合によっては削除という強硬手段がとられて、自由な場でなくなっているという懸念を持っていた。
気軽なツイートがマスクの運命を狂わせていく
もともとツイッターを好んで使っているマスクには、もちろんフォロワーも多い。このアンケートを投稿した時点で7900万人近いフォロワーがいるのだ。
一つひとつの投稿に注目が集まり、ニュースにもなり、投稿内容によっては大変な騒動になってしまう。普通の感覚なら、怖くて気軽につぶやけなくなりそうだ。
ところがマスクは違う。ガンガン投稿する。
いや、本人は「気軽」なわけではないのだろうが、外から見ると気軽で、自分の立場や状況を考えずに投稿しているように見える。
物議を醸し、多くの人の運命を変えたとも言えるマスクのツイートを見てみよう。