ワースト3 「ツイッターは死にかけているのか?」

『トップ』アカウントの大半はめったにツイートせず、コンテンツをほとんど投稿していない。ツイッターは死にかけているのか?(p.108)

イーロン・マスクがツイッターの株を9.5%も購入したというニュースを知って慌てたツイッター経営陣は、マスクに取締役になってもらえるよう依頼した。

マスクは迷ったがOKを出し、ツイッターのCEOパラグ・アグラワルは歓迎のツイートをして発表した。そのわずか4日後、2022年4月9日にマスクが出したのがこのツイートだ。

パラグはマスクにメッセージした。

『ツイッターは死にかけているのか?』などなんでも好きにツイートしていただいてかまわないのですが、そのような行為が、ツイッターを改善しようという私の努力を助けるものでないことは、立場上、お知らせせざるをえません。次にお目にかかった際には、そのせいで、現在、社内の業務がどれほど支障をきたしているのか、また、仕事の遂行力がどれほど傷ついているのか、そのあたりについてもお話しさせていただきたいと思います。(p.109)

この厳しいメッセージにマスクはキレた。

「株式非公開化を提案するつもりです」

取締役なんてやめて、買収することにしたのだ。

ワースト2 ツイッターを自ら辞めた社員に個人攻撃

あ~、なんかいろいろ腹落ちしたわ。(p.309)

ツイッターを買収したマスクは、ツイッター社の人間を大量に解雇する。『Breaking Twitter』にはこの血みどろの買収劇がいきいきいと描かれており、とても面白い。

マスクは確かに冷酷だが、真っ直ぐで人を惹きつける魅力的な人間でもあり、ツイッター社の人々もマスクに惹かれる。マスクと新しいツイッターのために一生懸命になるメンバーがいるのだ。

誤情報やヘイトスピーチなど不適切な投稿をチェックする部門トラスト&セーフティのトップ、ヨエル・ロスもその中の一人だった。

マスクもヨエルを信頼しているように見えた。ところが、新しいツイッターに希望が見えずにヨエルが辞職をすると、マスクは「裏切られた」と感じてしまった。

そして、会社を去ったヨエルを攻撃するようなツイートをし始めたのだ。

きっかけは、ヨエルが12年も前に投稿した「高校生が実効的な同意のもとで教師とセックスすることはありえるのか?」というツイートを、フォロワーの一人がぶら下げたことだった。

ヨエルのツイート自体は、どこかの誰かの論説文に対して言っている、当時はよくあるコメントでしかない。しかしマスクは「あ~、なんかいろいろ腹落ちしたわ」と言い、さらに学生の頃にヨエルが書いた論文の些末な部分をくっつけてこう投稿したのだ。

博士論文を見るかぎり、ヨエルは、インターネット上のアダルトサービスに子どももアクセスできるようにすべきだと主張しているように思える。(p.310)

こうしたマスクの犬笛により、ヨエルはすさまじい憎しみを受けることになった。個人情報もさらされた。ヨエルが恐怖に震えながらスーツケースを引き、逃げ出すことにした様子が本書の第18章に描かれている。

さすがにこれはひどい。

ワースト1 「ツイッターのトップから退くべきか」アンケート

ツイッターのトップから退くべきだろうか?
アンケート結果には従うつもりだ。
(p.371)

2022年12月11日、サンフランシスコで行われた、コメディアンのクリス・ロックとデイヴ・シャペルのショーに登場したイーロン・マスクは、なんとブーイングを受けてしまう。

ツイッター買収後、さまざまな失敗が積み上がり、ツイッターは人員も収益も減っていた。さらには頻繁に物議を醸すマスクのツイート。そんなこんなで、ブーイングが起きたのだろう。常に称賛されてきたマスクにとって初めてのことだった。

その場は丸くおさめたものの、傷ついていたに違いない。

そしてやはり、ツイートしてしまうのだった。2022年12月18日、ワールドカップ決勝戦で興奮する最中に出した「ツイッターのトップから退くべきだろうか?」

結果は、1750万人が回答して57%がイエス。マスクは大きなショックを受け、丸一日は何もツイートできなかった。

なぜ、そんなことを投稿せずにいられないのか。やめておけばいいのに……と思ってしまう。

アンケート結果は「ツイッターを去れ」だったが、マスクはツイッターを去らなかった。どのような考えかはわからない。

ただ、マスクの孤独さが際立っていくかたちで、『Breaking Twitter』は幕を閉じている。「これが本当にあったことだとは……」と驚嘆してしまう、すごい物語だ。

(本書は『Breaking Twitter イーロン・マスク 史上最悪の企業買収』に関する書き下ろし特別投稿です)