取材で会ったフィリピン人女性の大半が、日本での仕事は来日前の説明やイメージとはまったく違ったと語っていた。静岡県に暮らす60代のフィリピン人女性は次のように回顧する。
「日本に来たのは20歳。日本のどこで働くかはプロダクションが決めた。最初、和歌山だった。店行ったら、パスポート取られて、アパートに6人で住めって言われた。みんなでご飯作ってみんなで寝る。
お給料は月3万円。ここから寮費5000円抜かれた。これじゃ、生活も仕送りもできない。文句言ったら、店長は『足りなければ売春しろ』って言われた。店長は刺青があるヤクザね。その店長が客と交渉する。ショートが3万円、ステイが5万円。そのうち私がもらえるのはショート1万円、ステイ2万円だから、毎日やらないとお金稼げなかった。だからがんばったよ」
悪質な店も多く
売春の強要が横行
この頃は、フィリピン人が日本で出稼ぎをするには合法と非合法のやり方があった。前者は興行ビザを取得して働くというもの。後者は偽造パスポートや虚偽のビザで入国するか、観光ビザで入国して不法就労するというものである。
一般的には前者より、後者のフィリピン人を受け入れる悪質な店が多かったが、はっきりと分かれているわけではなく、合法的に来日した女性であっても、入店した店が悪ければ売春を強いられるようなこともあったそうだ。彼女たちにしても来日に当たって多額の借金をしていたことから、泣く泣く言いなりになっていたらしい。
先の女性は言う。
「日本人のお客さん、そんなに怖くなかった。ヤクザもちゃんと働いていれば怒らない。でも、ムスリム(イスラム教徒)のお客さんは嫌。フィリピンパブには、よくイラン、パキスタン、バングラデシュのお客さんが来る。ムスリムはすごい偉そう。ホテルに入ると、あれしろ、これしろっていっぱい言ってくる。セックスもせこい。ショートなのに3回も、4回も(性行為を)やろうとしてくる。私、『たくさんやるならもっとお金ちょうだい』と言うと、怒って殴ってくる。ムスリムは絶対嫌ね」