AIが「使えるかどうか」は、人間側の「使い方」で決まります。
そう語るのは、グーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなどを含む600社以上、のべ2万人以上に思考・発想の研修をしてきた石井力重氏だ。そのノウハウをAIで誰でも実践できる方法をまとめた書籍『AIを使って考えるための全技術』が発売。全680ページ、2700円のいわゆる“鈍器本”ながら、「めちゃくちゃ充実している!」「値段の100倍の価値はある」との声もあり話題になっている。思考・発想のベストセラー『考具』著者の加藤昌治氏も全面監修として協力し、「これを使えば誰でも“考える”ことの天才になれる」と太鼓判を押した同書から、AIの便利な使い方を紹介しよう。

【神プロンプト】ChatGPTで「新規事業案」をまとめる“頭のいい聞き方”・ベスト1Photo: Adobe Stock

新規事業をゼロから構想する型「リーンキャンバス」

 新規事業を開発していく際の、大きなプロセスは以下のとおりです。

①市場リサーチ 
②ビジネスの核となるアイデアを考える 
③アイデアをビジネスモデルとして整える 
④必要なリソースを調達する

……と、続いていきます。

③のビジネスモデルの作り方については様々な手法が百花繚乱のごとく乱立しています。そのなかでも有名なのが、経営学の研究者たちが提案した独自のフォーマットが乱立するなか、統合的なフレームワークとして2005年に生まれた「ビジネスモデルキャンバス(BMC)」です。わかりやすく、共有しやすかったこともあり、あっという間に世界中で使われるようになりました。

 そして、このBMCフォーマットがスタートアップやゼロからの新規事業にとって使いやすいように改良されたのが、2012年に登場した「リーンキャンバス」です。

さらに使い勝手の良くなった「リーンキャンバス改」

 そしてそして、日本の大企業が使いやすいように、さらに一部を改良した「リーンキャンバス改」も登場。川崎重工業の吉田恭子氏によって提案されたものであり、それが効果的であったため、国内でよく使われるようになりました。私のコンサルティングでも使う定番モデルのひとつです。

【神プロンプト】ChatGPTで「新規事業案」をまとめる“頭のいい聞き方”・ベスト1書籍『AIを使って考えるための全技術』より

「リーンキャンバス改」を構成する要素は上記の図のとおり。これらの要素を網羅することで、検討したい新規事業の概要がかなり具体的になります。とくに「リソース」の項目は、オリジナルの「リーンキャンバス」には含まれていません。日本企業の新事業企画でよく使うもので、入れておくと便利なアイテムなので「改」には採用しています。

「リーンキャンバス改」を一瞬で描く技法「新規事業構想の型」

 さて、この「リーンキャンバス改」、すべての要素を描き出すには早くて半日、普通は終日、みっちりやるなら数日間は調べて考えて書いて……と、時間がかかる作業です。ゼロから考えていくとなると当然、行ったり来たりする手戻りもあり、無駄な時間も発生してしまいがち。

 時間は有限ですから、一連の作業はAIに考えてもらいましょう。それが技法その26「新規事業構想の型」です。思い浮かんでいる抽象的なアイデアをAIに伝えると、「リーンキャンバス改」の各要素に沿って記述を展開してくれます。

 こちらが、そのプロンプトです。

<AIへの指示文(プロンプト)>

〈ビジネスのアイデアを記入〉というアイデアを発展させるために、リーンキャンバスの各要素を考えてください。リーンキャンバスの要素を以下に示します。顧客セグメント、初期顧客のペルソナ、課題、既存の代替品、独自の価値提案(UVP)、ソリューション、チャネル/販路、収益の流れ、コスト構造、主要指標、圧倒的な優位性、リソース。

「リーンキャンバス」は世界的に有名な型であるため、ほぼすべてのAIはこの構造を把握しています。ただし「リーンキャンバス改」は日本独自のもので、まだそれほど認知が広くないためか、名称をそのまま入力しても把握してくれません。あるいはシンプルなリーンキャンバスと“勘違い”してしまいます。

 よってプロンプトでは、「リーンキャンバス」と記載した上で、構成要素を書き出し、その最後に「リソース」を追記することで「改」仕様にしています。

「新規事業」のアイデアを考えたいときは迷わずに使おう

 アイデアを「新規事業」の企画として整えたいときや、優劣をつけがたい事業企画のアイデアを判断する際などが、この技法の使いどころ。

 また、新規事業のいずれかの要素を変えることで、ビジネスモデル全体がどう変わるのかを検証、検討したいときにも最適です。

 通常、「リーンキャンバス改」の要素を1つ変えると、多数の項目に修整が必要となり、正直かなりの手間がかかります。でもAIならフィードバックを受けての改良も簡単。一度「リーンキャンバス改」を書いてもらったスレッドに続けて、「○○の要素を△△に変えて書き換えてください」と入力するだけです。各要素との整合性がとれた新バージョンがすぐに出力されていきます。

 技法その26「新規事業構想の型」、ぜひ活用してみてください。

(本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。この他にも書籍では、分析、発想、発展、具体化、検証、予測といった“頭を使う作業”にAIを活用する方法を多数紹介しています)