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9月非農業部門就業者増、市場予想を大幅上回る
AI投資がけん引、米経済の堅調続く
米国経済は、トランプ関税による価格転嫁拡大などで減速が懸念されているが、11月20日に、政府機関一部閉鎖で公表が遅れていた9月の雇用統計が発表され、景気動向を反映しやすい非農業部門の就業者数(季節調整済み)は、前月比11.9万人増と、市場予想の5.0万人を大きく上回った。
失業率は4.4%と、連邦政府などの雇用減少で前月から0.1%悪化したが、大きな落ち込みにはなっていない。26年会計年度予算を巡る議会の紛糾で、政府機関の一部閉鎖は、来年1月までのつなぎ予算が11月12日に成立するまで10月から過去最長の43日間に及んだが、米国経済はこうした混乱をよそに好調を維持している。
関税は大幅に引き上げられたが、いまのところは物価上昇率の急激な上昇は回避されている。株式市場は一時的な調整はあったが、最高値更新が続き、富裕層などの消費は堅調だ。
あたかも政治的混乱は対岸の火事のように、経済と金融が独り歩きしているかのようにも見える。
国際通貨基金(IMF)や連邦公開市場委員会(FOMC)は、米国の2025年実質国内総生産(GDP)成長率は前年比約+2%と見通しているが、26年もこうした状況が続くのだろうか。
筆者は、ベースケースとしては、26年も米経済は今年並みの成長が続くと予想している。
その大きな理由はAI(人工知能)ブームのもとで、旺盛なAI関連投資が引き続き見込まれることだ。
「ハイパースケーラー」と呼ばれるアマゾンやメタ、アルファベット(グーグル親会社)、マイクロソフトなどは、2025年だけで58兆円(3800億ドル)超のAI関連投資を行う計画だ。
26年についても、ハイパースケーラーは今年以上のAI投資をすでに表明しており、彼らにとっては、AIバブル崩壊のリスクよりも、AI投資が遅れることで、他社が先に汎用人工知能(AGI)を達成することの方がリスクは高いようだ。
だが、急ピッチで進む投資に見合う収益を生み出すことができるのか、懐疑的な見方は徐々に強くなっており、とりわけ特定の企業に依存したAI関連企業間の“循環取引”のようなもたれあいが、特定企業の収益悪化から一気に不安定化する可能性がある。
ほかにも、このところ自動車ローン業者や自動車部品会社が破綻するケースが相次ぎ、事業者の不透明な資金調達や低所得者向けローンの不良化などが、広範囲に起きていることが懸念される。
これらのリスクが現実となれば、米経済は一転、大きな調整を迫られる。







