やなせたかしも手掛けた
劇場のポスター制作
カフェで大根座長(青柳翔)と打ち合わせ。クレジットに「大根座長」とあったから座長っていう名前?と一瞬思ったが、座長は演劇の座長のことと理解する(当たり前)。
三星百貨店のモデルは三越で、三越劇場を経営していた。実際、嵩のモデル・やなせたかしは三越劇場にかかる芝居のポスターも手掛けていた。文学座のポスターを担当したそうだ。
大根は文学座の演出家がモデルであろうか。作品の構想を熱く語る。歌舞伎『戻橋』の鬼退治の話は嵩も映画(1929年)で観て知っていたし、戦争中に鬼の話を紙芝居(双子の島)でやったことがあり、鬼ものには共感するようだ。大根も話が合って満足そう。
ただし、実際のやなせがポスターを描いた文学座作品がこういう作品だったかはわからない。
『戻橋』は渡辺綱が鬼女を退治する話だ。鬼退治といえば『鬼滅の刃』。渡辺綱の使った刀・鬼切丸(別名髭切〈ひげきり〉)は『刀剣乱舞』に登場する。令和のいまと親和性のある題材をここに持ってきている工夫を感じる。
「せっかく生きてるんだ。心から楽しいと思える時間を多くのお客さんに届けたい」
と明るく語る大根。ふたりの話を背後で聞き耳を立てている者がいた。
「僕もそう思います」
話に割り込んできた学生服の青年は、いせやくや(大森元貴)。
「あ 僕は何者なんでしょう」
自分で自分が何者かわからない。ぺらぺらと自分語りをするたくや。でもそれを自覚している頭の良さがある。
演じているのはMrs.GREEN APPLEの大森元貴。大人気バンドのボーカルながら、映画『#真相をお話します』にも出演し、俳優としての才能も発揮している。詳細はインタビューをご参照ください。
たくやと3時間も話したと、帰宅してのぶに報告する嵩はこころなしか楽しそう。
「嵩も変わっちゅうき 話が合うたがかもね」と言われて、「僕って変わってる?」と驚く嵩は、自分が変わり者であることに自覚がない天然である。
座長は「姿かたちが変わらないので誰が鬼かわからない」と新しいものに挑戦しようとしているから、自分も斬新なポスターを作りたいと嵩の口調は熱を帯びる。それをのぶはキラキラした瞳で見つめる。
今田美桜はこういう相手を見つめる熱視線の立ち位置が似合っているなあと思う。だから議員秘書の役も似合う。
ただ議員秘書の仕事はやや雲行きがあやしい。
鉄子は大忙しであちこち飛び回り、「立ち回り方考えて置いてかれんようにせんと」なんて言っている。そんな彼女にのぶは少し戸惑って見える。
