「暑い家」と「涼しい家」の違いはどこから?
その差が生まれる理由

 住宅の涼しさに影響する要因はさまざまあり、個人でコントロール可能なものとそうでないものに大別される。後者にあたるコントロールが難しい要因の代表格が、住んでいる地域や周辺の状況といった「環境」だ。日当たりや風通し、夏の強い日差しで熱せられた隣家の壁面から直接伝わってくるような輻射熱といった要素は、家の温熱環境に大きく影響するものの、住む人が自由に変えるのは容易ではない。だからこそ、自分たちで工夫できる要因に意識を向け、その質を追求していくことが大切になってくる。

 一方で、前者のコントロール可能なものの筆頭が、家の基本性能を決める「設計仕様」、つまり使用する断熱材や窓の性能などの部分だ。この仕様は、国が定めた住宅性能評価制度における「断熱等性能等級」といった指標で示される。

 特に2000年以降の住宅ではこの評価を取得している物件もあり、等級の数字が家の性能を知るための重要な目安となる。「断熱等性能等級」については、2025年4月から、新築住宅において等級4以上が法的に義務化された。ただ、この等級4はあくまで法的な最低ラインであり、実際に快適な暮らしを実現するためには、等級5以上の性能がより望ましいと言えるだろう。

 ただし、ここで留意すべきは、この等級の数字がそのまま住まいの快適性を保証するわけではないという点だ。図面上の性能は、あくまで現場の丁寧な施工によって初めて実現されるものであり、その根幹をなすのが「施工品質」なのである。

 実際、さくら事務所が実施した2024年の調査では、新築工事中の住宅のうち、断熱施工に何らかの不具合が指摘された割合は実に60.5%に達した。いわば、新築住宅の半数以上が、断熱性能に何らかの課題を抱えたまま建てられている可能性があることを示している。

 現場での施工不備は、住宅の性能を著しく低下させてしまう。