夏の自宅で快適性と安全性を守る
3つのチェックポイント

1.冷房は『適切に』使用する
 まず一つ目は、家の断熱性能の高さにかかわらず、冷房は適宜使用すること。断熱材自体が冷えて家を涼しくしてくれるわけではない。断熱材に外からの熱の侵入をしっかりと防いでもらいつつ、室内を快適な状態に保つためには、やはり冷房を適切に使うことが不可欠となる。

 ただし、使い方を誤ると、壁の中で結露を発生させ、見えない部分で建物を傷める原因にもなりかねない。設定温度を極端に下げすぎないこと、冷たい風が壁や天井に直接、長時間当たり続けないように風向を調整するなどに配慮したい。

2.窓からの熱の侵入を防ぐ
 二つ目は、窓からの熱の侵入を最優先で防ぐ、という視点である。住宅の中で最も熱の出入りが激しい箇所である窓の対策が重要となる。室内側でカーテンを閉めるのはもちろん、屋外側ですだれやグリーンカーテンを活用したり、サンシェードを取り付けたりするなどの工夫が求められる。

3.壁紙の染み・剥がれ・カビといった“危険サイン”に気づく
 三つ目は壁のサインを見逃さないこと。壁紙に現れる染み、剥がれ、あるいはカビは、見過ごしてはならないサインとなる。これらは、目に見えない壁の内部で結露が発生している可能性を示しているためだ。壁の中の異常を知る重要な手がかりであるため、日頃から壁の状態をセルフチェックし、もし異常を見つけたらハウスメーカーなどに相談することをおすすめする。

快適性、健康、資産価値
すべてを決める「断熱」の重要性

 かつて住宅の「断熱」は、主に冬の寒さをしのぐための、快適性の一要素として語られることが多かった。しかし、近年の記録的な猛暑と、それに伴う健康リスクの増大は、その位置づけを根本から変えつつある。今や断熱性能は、快適性はもちろん、家族の健康、日々の光熱費、ひいては住宅の資産価値そのものを左右する、暮らしの根幹をなす最重要要素と言っていい。

 設計上の基準は年々高くなっている一方で、その性能が十分に発揮されるかどうかは、繰り返しお伝えしてきた施工品質、そして、日々の暮らし方に大きく左右される。これからの家づくりで重要なのは、まさしく「机上の話だけで安心しない」という視点を持つことにあるのだ。

 設計図の等級や数値だけを絶対視するのではなく、それが現場でいかに実現され、どう維持されていくのか。その「数字では見えない品質」に目を向けることこそが、これからの酷暑の時代に、自らや家族の健康、そして資産を守るために欠かせない視点となるはずだ。

(株式会社さくら事務所創業者・会長 長嶋 修)

さくら事務所公式サイト
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