コロナ禍明けの現代と似てる?必死で何かを取り戻そうとする人々

『東京ブギウギ』は朝ドラ『ブギウギ』(24年度後期)のヒロインの持ち歌でもあった。
この頃、東京、銀座界隈には、大スター・福来スズ子(趣里)やラクチョウ(有楽町)のおミネ(田中麗奈)が熱く生きているのかもしれない。さらにいえば『虎に翼』の寅子(伊藤沙莉)が近くの霞が関の司法省にいたのかもしれない。広がる朝ドラユニバース。
話を戻そう。愉快なキャラが大集合、ほのぼのワールドになってきたように見える『あんぱん』。劇伴でも初めて聞く曲が増えた。楽しそうな『あんぱん』ワールドだが、みんな戦争でなかったことにされた数年を取り戻そうと必死だ。それをできるだけ楽しく描こうと腐心しているようにも見える。
令和のいまでいえばコロナ禍で数年、いろいろなことがストップしたり、ゼロになったりしたけれど、いま、みんなそれを取り戻そうと活動しているような感じであろうか。
嵩は自分の漫画が認められると「生きてていいんだってホッとするんだ」とのぶに語る。戦争で生き残った者たちは亡くなった人たちに対して後ろめたさも感じながら、生き残った分、亡くなった方の分までも存分に生きなくてはいけない。そんな責任感もあるだろう。
嵩は漫画、蘭子は東京で新しい仕事、メイコはのど自慢、健太郎はNHK、のぶは代議士秘書、いせたくやは歌やお芝居と、みんなそれぞれ何かを取り戻そうとしているのだ。
24時間漫画のことだけ考えられたらいいけれど、そうなると自分の才能と向き合うことになる。それにおびえる嵩。嵩がなかなか漫画を描けないのは、勝負から逃げているのだ。結果を出すのがこわいのだ。
とくに手嶌治虫の登場で、出遅れた感もある。こういう不安な気持ちは誰しもあるだろう。でもどこかで勝負に出ないといけないときがくるもので。
そんな時のぶが、あの天才・手嶌よりも「嵩の漫画のほうが好きや」と言ってくれた。これほど心強いことはないだろう。嵩に必要なのは、こういう絶対的な応援だったのだ。メイコだけでなく、嵩の物語も動き出していく。