適切な食事と運動が
最強の良薬

 体を鍛えるためのトレーニングと聞くと、どうしてもI(強度)にばかり意識を向けてしまいがちですが、まずは安全に行えることがなによりも大切です。

 したがって腎臓病の患者さんは、F(頻度)を多くしたり、T(時間)を延ばしたりしながら、運動の総量であるV(運動量)を増やしていくことが優先されます。

 薬も量が多くなれば効き目は増していきますが、必要以上に飲みすぎてしまっては体を壊してしまいますよね。

 運動もそれと同じで、量を増やすことに大きな意義はあるものの、強すぎてしまっては逆効果になってしまうのです。

 そのためには医師による“処方”が必要であり、どんな運動を、どれくらいの頻度や強さ、時間で行えばいいのかを、しっかりと考えていく必要があるでしょう。

 とくに慢性腎臓病の患者さんは、健康や栄養に気をつかったじゅうぶんな食事を摂っていたとしても、たんぱく質やアミノ酸が筋たんぱく(筋肉を構成するたんぱく質)の合成に利用されにくくなっているため、食事療法だけではどうしても骨格筋の減少を防ぎきれません。

 なぜならば、慢性腎臓病では、身体活動の低下、すなわち運動不足に加えて、尿毒症物質の蓄積や炎症性サイトカインの増加、インスリン抵抗性などを招くため、それらが複合的に骨格筋の減少に働いてしまうからです。

 筋たんぱくの分解による筋力低下を阻止するためには、きちんとした食事療法はもちろんのこと、有酸素運動や筋力トレーニングによる運動療法が重要になります。

 運動こそが筋たんぱくの合成を促す最大の刺激因子なので、すなわち腎臓リハビリメソッドが最強の良薬といっても過言ではないのです。